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LED素子の製造コストを最大1/100に――ガラス基板上での作成に成功東京大学 藤岡教授ら(1/2 ページ)

東京大学生産技術研究所の藤岡研究室(藤岡洋教授)は、スパッタリング法を用い安価なガラス基板上に窒化物半導体のLED素子を作成する技術を開発した。有機金属気相成長法(MOCVD)とサファイア基板を用いて製造した従来のLED素子に比べて、製造コストを最大1/100にできる可能性があるという。

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 東京大学生産技術研究所の藤岡研究室(藤岡洋教授)は2014年6月23日、スパッタリング法を用い安価なガラス基板上に窒化物半導体のLED素子を作成する技術を開発したと発表した。有機金属気相成長法(MOCVD)とサファイア基板を用いて製造した従来のLED素子に比べて、製造コストを最大1/100にできる可能性があるという。フレキシブルで大画面のLEDディスプレイや、光通信機能を備えた面発光LED照明光源といった用途への応用が期待されている。

 一般的なLEDは、サファイアなどの単結晶基板上にMOCVD法を用いて形成する。発光効率が高く、応答速度が速い、寿命が長いといった特長を備えているものの、製造コストが高く、大面積のディスプレイには適さない、といった課題もある。一方、液晶ディスプレイ(LCD)は、製造コストが安いものの、LEDに比べて視野角が狭く、応答速度が遅い、コントラストが低い、外部光源が必要などの課題がある。同様に有機ELも製造コストや製品寿命などの点で課題がある。

フルカラーLEDを試作


東京大学生産技術研究所の藤岡洋教授

 そこで藤岡氏らは、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援を受けて、表示品質を維持しつつ、製造コストを低減するためにスパッタリング法を用いて、安価なガラス基板上にLEDを作成する技術を開発した。しかも、製造プロセス温度を500℃以下に下げることで、これまで窒化物半導体のLEDでは困難とされていた赤色の発光も可能とし、青色と緑色を加えたRGBフルカラーLEDの試作に成功した。

 ただ、非晶質であるガラス基板上に、結晶質の窒化物半導体を直接積層することは難しいとされている。そこで同研究室は、ガラス基板と窒化物半導体の間にグラフェン層を設けることで、ガラス基板上でも良好な窒化物半導体を形成することに成功した。藤岡氏は、「ロールツーロール方式で高品質のグラフェンを大量生産する技術は、既にソニーなどから発表されている。今回はこうした手法を用いグラフェンを安価に作成することができた」と話す。

従来のLEDと今回開発したLEDとの比較。製造プロセスはMOCVD法からスパッタリング法へ(左)、出発基板材料をサファイア基板からガラス基板+グラフェン界面層へとそれぞれ変更することで、製造コストの大幅な削減を可能とする (クリックで拡大) 出典:東京大学生産技術研究所の藤岡研究室

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