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LED素子の製造コストを最大1/100に――ガラス基板上での作成に成功:東京大学 藤岡教授ら(2/2 ページ)
東京大学生産技術研究所の藤岡研究室(藤岡洋教授)は、スパッタリング法を用い安価なガラス基板上に窒化物半導体のLED素子を作成する技術を開発した。有機金属気相成長法(MOCVD)とサファイア基板を用いて製造した従来のLED素子に比べて、製造コストを最大1/100にできる可能性があるという。
500℃以下のスパッタリング法
また、ガラス基板を用いる場合、サファイア基板に比べて耐熱温度が低く、処理温度が1000℃に達するMOCVD法のような高温プロセスを使うことができないため、処理温度が500℃以下というスパッタリング法を用いて製造した。この結果、高価なサファイア基板を用いなくても安価なガラス基板上にLEDを製造することが可能となった。しかも、スパッタリング法は既にLCDやICの量産ラインで用いられているため、既存の製造装置を有効活用することが可能である。
今回開発したLEDの性能について藤岡氏は、「LEDは窒化ガリウム(GaN)を積層した構造となっており、それ自体の基本性能は高い。出発基板としてガラス基板を使うと、結晶性がやや劣化する。その分だけサファイア基板を用いた場合に比べて発光効率は少し劣る。この差分を極めて小さくできるように研究を続けていく」と述べた。
また、新技術の応用として、薄型ガラス基板を用いたフレキシブルLEDディスプレイ装置や、光通信機能を備えたディスプレイ装置、数メートル角のガラス基板を使った面発光の照明用光源など、新たな用途も期待されている。
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