室温動作のテラヘルツ波検出器、カーボンナノチューブ用いて東工大らが開発:センシング技術 画像認識
東京工業大学(東工大)量子ナノエレクトロニクス研究センターの河野行雄准教授らは、米国の大学や国立研究所と共同で、カーボンナノチューブを用いた室温動作のテラヘルツ波検出器を開発したと発表した。医療用の画像診断装置や空港のセキュリティ検査装置、食品用検査装置などへの応用が期待されている。
東京工業大学(東工大)量子ナノエレクトロニクス研究センターの河野行雄准教授らは2014年6月、米国のライス大学、サンディア国立研究所と共同で、カーボンナノチューブを用いた室温動作のテラヘルツ波検出器を開発したと発表した。医療用の画像診断装置や空港のセキュリティ検査装置、食品用検査装置などへの応用が期待されている。
東工大、ライス大学およびサンディア国立研究所の研究チームは、配列されたカーボンナノチューブの薄膜を用いて、室温で動作するテラヘルツ波検出器を開発した。これまでもカーボンナノチューブを使った検出器の研究は行われてきたが、波長が数十〜数百μmのテラヘルツ波を、単体のカーボンナノチューブで検出するためには、アンテナの結合が必要となっていた。
アンテナ不要
そこで今回は、ライス大学のRobert Hauge研究員とXiaowei He博士が開発した高配向カーボンナノチューブ薄膜を利用して、アンテナが不要な光検出器を考案した。この光検出器は金属ナノチューブのテラヘルツ波を吸収する特性と、半導体ナノチューブ特有の電気的特性を兼ね備えているという。開発した光検出器を用いると、可視光や赤外光、テラヘルツ波と広い周波数帯域を1つのデバイスで検出することが可能となる。
共同研究チームではこれからも、テラヘルツ波の検出能力のさらなる向上、ナノチューブ薄膜などデバイス構造の最適化、一層の集積化などに取り組んでいく予定である。
テラヘルツ波(周波数が0.1~30THzの電磁波帯)は、紙や布など多くの物質を透過する半面、特定物質に吸収されやすいため、食品や生体検査などへの応用が期待されている。ただ、光に比べてエネルギーが極めて小さく、応用分野を拡大していくには、効率的に吸収/検出できる材料の開発などが急務となっていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自動運転車はステレオカメラだけで実現できる――「アイサイト」開発者に聞く
自動運転車などに不可欠な自動車の周辺環境を検知するセンサーとしてステレオカメラが注目を集めている。ステレオカメラの第1人者で、富士重工業のステレオカメラを使った運転支援システム「アイサイト(EyeSight)」の開発にも携わった東京工業大学放射線総合センター准教授の實吉敬二氏にステレオカメラの可能性などについて聞いた。 - 研究大学で世界トップ10目指す――東工大が教育改革
東京工業大学(東工大)が「世界トップ10に入るリサーチユニバーシティ(研究大学)」を目指して教育改革推進に乗り出す。学生を“世界で活躍する人材”に育てていくための施策とは? - 省電力で二冠を達成したスパコン「TSUBAME」、鍵は“油に浸して冷却する”
省エネ性能ランキングで世界一となった、東京工業大学のスーパーコンピュータ「TSUBAME-KFC」。消費電力の低減の鍵となったのは、油浸冷却システムの採用である。