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ニッチ用途の域を出ないMRAM、普及の鍵はコストと記録密度普及にはもう少し時間が必要(2/2 ページ)

幅広い用途でDRAMやSRAMの置き換えになると予想されているMRAM(磁気抵抗メモリ)。産業用途を中心に採用が進んでいるが、普及が加速するにはまだ時間が必要なようだ。

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 Everspin Technologiesのプロダクトマーケティング部門でディレクタを務めるJoe O'Hare氏は、「当社は5年以上前にMRAMの出荷を開始した。当初は産業向けだったが、現在は工場オートメーションやロボット、輸送、医療用途などにも使われるようになっている。特に、エンタープライズストレージでの利用が伸びている」と述べている。

 同社は、「記録密度が増加すれば、MRAMは、DRAMの性能を備えながらフラッシュメモリのような不揮発性メモリとして普及していくと考えている。MRAMは、持続性の高い高性能ストレージを実現するための重要な選択肢の1つになる」と述べている。

 MRAMのエンタープライズストレージ用途の一例として、RAIDシステムがある。RAIDシステムでは、停電から早急な復旧が課題となっている。メタデータやストレージシステムデータをMRAMに保存に使用することで、停電発生時も、RAIDシステムを素早く復旧できる。

 O'Hare氏によると、Everspin Technologiesはエンタープライズストレージ市場で、DRAMほどの記録密度を必要とせず、不揮発性メモリの利点を生かすことのできるMRAMの用途を模索しているという。同市場の規模はかなり大きい。同市場でのMRAM普及の鍵は、システムのコストではなく信頼性である。

普及の鍵はコストと記録密度

 米国の市場調査会社であるObjective Analysisで主席アナリストを務めるJim Handy氏は、「MRAMがDRAMやSRAMに代わって幅広く普及できるかどうかは、コストと記録密度にかかっている。消費電力が低いことも魅力だが、運用コスト(TCO:Total Cost of Ownership)を計算する企業は少ないと思われる」と述べている。MRAMを使えばバックアップバッテリーが不要になる。バックアップバッテリーは故障も多いことから、SRAMの置き換えにMRAMが採用される可能性は高い。

 銀行のATMのように、MRAMの不揮発性が重視される場合は、コストにかかわらず採用が進むと期待される。ただし、DRAMやフラッシュメモリも技術改善が図られ、運用面での問題は少なくなってきているため、MRAMへの置き換えが早急に進む用途では、まだないようだ。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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