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「LCD市場はまだ切り開ける」、シャープのディスプレイは“脱四角”も訴求IGZO技術を生かす(1/2 ページ)

新しいディスプレイとして「フリーフォームディスプレイ(FFD)」を発表したシャープ。ゲートドライバを画素内に分散して配置することで、丸型や穴開き型など、四角以外の形状を実現できるもの。同社は、四角一辺倒だったディスプレイの常識を打ち破り、ディスプレイの新たな価値を提供できると大きな期待を持っている。

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 「ディスプレイ」と聞くと四角い形状を思い浮かべるのが一般的だ。テレビをはじめ、PCのモニター、スマートフォン、タブレット端末など、いずれも四角いディスプレイ備えている。「ディスプレイは四角い」という“常識”を破ろうとしているのがシャープだ。

 同社は2014年7月7日に東京都内で記者説明会を開催し、自由な画面形状を設計できる「フリーフォームディスプレイ(FFD)」を紹介した(関連記事:シャープ、自由な形状に設計可能な「フリーフォームディスプレイ」を開発)。

 第1弾として、インストルメントパネル(インパネ)やセンターインフォメーションディスプレイといった、車載用途向けに2017年の実用化を目指している。

「フリーフォームディスプレイ」のプロトタイプ(クリックで拡大)

ゲートドライバを画素内に配置

 フリーフォームディスプレイの最大の特長は、ゲートドライバの配置方法にある。

 ディスプレイは、ゲートドライバを表示領域(画面)の外周部に配置するための額縁幅が必要なので、四角い形状が一般的である。フリーフォームディスプレイは、ゲートドライバを額縁ではなく、表示領域にある画素内に分散して配置している。左右の額縁にゲートドライバを配置する必要がなくなるので、額縁幅を非常に細くできることに加え、左右の額縁を切り取って自由な形状を実現することも可能になった。

左=フリーフォームディスプレイでは、ゲートドライバを画素内に分散して配置している(出典:シャープ)。右=額縁を最小限まで細くしたディスプレイ。「CEATEC JAPAN 2013」のシャープのブースで展示されたもので、同社は「フレーム(額縁)レス」と呼んでいた(クリックで拡大)

シャープのディスプレイデバイス開発本部 表示モード開発センター所長の伊藤康尚氏

 さらに、フリーフォームディスプレイではIGZOでゲートドライバを形成している点も重要になる。画素内にゲートドライバとゲート信号線を配置すると、開口率(光の利用効率)の低下を招く。バックライトからの光を通す上でゲートドライバと配線が邪魔になるからだ。だが、電子移動度が高いIGZOを使えばゲートドライバをできるだけ小さく形成できるので、開口率の低下を最小限に抑えることができるという。シャープのディスプレイデバイス開発本部 表示モード開発センター所長の伊藤康尚氏は、「IGZOが本質的に備えている低消費電力という特長や、バックライトの工夫などで、開口率の犠牲を少なくしている。そのため、われわれとしては、ディスプレイの形を自由に変えられるという価値の方をより重視している」と説明する。

 製造工程は、従来の四角いディスプレイとは大きく変わらないので既存の製造ラインで対応できるという。どの世代の液晶で製造するかについては今後検討していく予定だ。製造コストについては、「形状を変える工程分が加わるかもしれない」(伊藤氏)としつつも、製造工程の工夫などによりなるべく追加コストを抑えていきたい考えだ。歩留まりについては「大きな影響はないと見込んでいるが、これから検証を進めていく」(同氏)という。

 フリーフォームディスプレイは、ガラス基板だけでなく、フィルム基板などとも組み合わせることが可能だという。フィルム基板を用いれば、フレキシブルかつ自由な形状のディスプレイを製造でき、用途がより広がる可能性もある。

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