IoTを考える――洗濯機とグリルの通信に、意味はあるのか:ビジネスニュース オピニオン(1/3 ページ)
あらゆる分野でモノのインターネット(IoT)が注目されている。確かにIoTは、次世代エレクトロニクス産業の鍵を握る重要なテーマだ。だが筆者は、IoTの概念に対して懐疑的な気持ちを拭い切れない。
ひねくれた意見だと言われることを承知で告白しよう。モノのインターネット(IoT)については肯定的な意見が多いが、筆者はIoTの概念自体に懐疑的な気持ちを抱いている。そして、少しうんざりしている。
米国のネットワーク機器メーカーであるCisco Systemsは、「2020年までに、500億台のIoTデバイスが導入される」と予測している。この数字を見れば、大抵の人は「IoTは素晴らしい技術に違いない」と思うだろう。だが、筆者は、「IoTは一般的な消費者にも必ず普及する」と確信できるような、信頼性の高いシステムを聞いたことがない。
正直に言えば、自宅にある電子機器が他の電子機器とやり取りしたり、勝手に動作したり、筆者の習慣や気質をその善しあしにかかわらず、見ず知らずの他人(広告主やサービスプロバイダ、別の電子機器)に知らないうちに伝えたりするなんて、考えただけでゾッとする。そこに、心地よさや快適さは全く感じられない。
ハッキングされたスマートLED電球
つい最近、「スマートLED電球がWi-Fiパスワードをリークする」という記事が掲載された。セキュリティの専門企業である英国のContext Securityは、ネットワークに接続されたLED電球を簡単にハッキングして、遠隔操作で消灯/点灯する方法の詳細を発表した。
これはまるで、Isaac Asimov(アイザック・アシモフ)のSF小説や映画「2001: A Space Odyssey(2001年宇宙の旅)」に描かれているような話だ。人間に使われる存在であるはずの電球が、ネットワークに接続されることで知恵を手に入れ、人間が頼みもしないことをやり始める。
Context Securityは、同社のブログの中で、ネットワークにつながるLED電球をハッキングするのがいかにたやすいか、そして最終的にはハッキングした人物(クラッカー)が遠隔操作によって電球のオン/オフができるようになるかを説明している。
Context Securityはスマート電球「LIFX」を使ってデモを行っているが、その方法は実にありふれたものだ。マスター電球は、スマートフォンアプリからのコマンドを受信し、無線メッシュネットワークに接続された他の電球に送信する。クラッカーは、ネットワークに新たに接続された電球を装うことで、電球が接続されている家のWi-Fiユーザー名とパスワードを取得できる。
LIFXは、セキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性の指摘を受けて、ソフトウェアをアップデートしている。しかし、ネットワークに接続されたスマート機器が知らないうちに赤の他人に遠隔操作されて、突然オン/オフされることがないとも限らない。
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