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無線センサーをWebサーバ並みに接続しやすくするための取り組み無線通信技術 IoT(1/2 ページ)

モノのインターネット(IoT)の重要な要素であるワイヤレスセンサーネットワーク。IPプロトコルを使用して低消費電力メッシュネットワーク機器をインターネットに接続できるようにする取り組みが進んでいる。

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 モノのインターネット(IoT)市場が熱気を帯びている。インターネットに接続される端末は、2020年までに世界で300億個を超えると予測されている。世界の人口が増加し、リソースの希少性がさらに高まる中、実世界のデータを相互接続することによって供給し、効率を向上してビジネス実務の流れをよくする効果が見込まれている。

 IP(Internet Protocol)の普及により、データを処理してその情報を有効に活用することは格段にやさしくなっている。スマートフォンやタブレット端末を使用して、駐車場のライブ情報や、メンテナンススケジュールを通知するリアルタイムのマシン状態モニタリングの情報など、有益な情報を得ることが可能だ。また、ワイヤレスセンサーの導入も進んでいて、さらなるセンサーデータを入手することへのニーズが大いに高まっている。


IP対応ワイヤレスセンサーの信頼性を向上し、低消費電力化することで、広範囲な用途を実現

 センサーの大規模な導入を促進すべく、IP規格に関する取り組みが行われていて、Webサーバにアクセスする時と同じくらい簡単に小型ワイヤレスセンサーにアクセスできるようにすることが目標になっている。これらは、時間同期メッシュネットワークの低消費電力かつ高信頼性の性能と、インターネットへのシームレスな統合のために現在進められているIP規格の取り組みを組み合わせたものだ。すなわち、消費電力が低く、信頼性の高い通信が可能な、IP対応の小型センサーの実現を目指している。

ワイヤレスセンサーネットワークの課題

 無線はその性質上、信頼性が低いので、通信システムでこれに対処するには、まず、信頼性を低下させている要因を理解することが重要になる。

 低消費電力の無線ネットワークで信頼性を低下させる主な要因は、外部干渉とマルチパスフェージングだ。干渉は、外部信号(Wi-Fiなど)によって、2つの無線装置間の通信が一時的に途絶えるときに発生する。再送信が必要になるので、電力消費量が増加してしまう。マルチパスフェージングは、無線信号が送信機の近くで対象物に反射したときに発生し、さまざまな反射波が受信機のアンテナで打ち消し合うように干渉する現象だ。これは、機器の位置、使用されている周波数、周囲環境に左右される。どのようなワイヤレスシステムでも、その周囲環境は時とともに変化するため、いずれのRF周波数チャネルについても、ワイヤレスシステムのライフサイクル全体で見た場合には問題が発生する。ただし、マルチパスフェージングは周波数に依存するので、ある周波数で問題が発生していても、他の幾つかのRF周波数は正常に機能する。

時間同期メッシュネットワーク

 高信頼なワイヤレスシステムを構築する鍵は、低消費電力動作のままで、多様なチャネル/経路を取り入れることにある。このようなシステムの一例として、Dust Networks(2011年12月にリニアテクノロジーが買収)は、時間同期式のチャネルホッピングメッシュネットワークを開発している。

 同技術では、マルチホップネットワーク内の全てのワイヤレスノードが数十μs以内の精度で同期され、時間はタイムスロットに分割される。通信は、各タイムスロットで行う動作(送信、受信、スリープ)を各ノードに通知するスケジュールによって制御される。同期しているので、各ノードは通信時のみ無線をオンに切り替える。これにより、無線デューティサイクルが大きく削減され、電池寿命を延ばすことができる。

 さらに、スケジュールには柔軟性があるため、ネットワークを長時間にわたって完全にシャットダウンしてしまうようなネットワークアーキテクチャとは異なり、ネットワークはアプリケーションによって常に使用可能だ。2つのノード間で送信された各パケットは、疑似乱数のホッピングパターンを使用して計算された周波数で送信される。これによって得られる周波数の冗長性は、干渉とマルチパスフェージングの解消に効果的だ。

産業用途にも向く

 産業用アプリケーションでは、非常に過酷な動作環境でありながら、データ整合性に対する要求が極めて厳密である。産業用プラントにおける効率性、生産性、安全性を向上させるためだ。

 一般的な有線の産業用センサーは設置に費用がかかるため、従来は、プラント内の測定対象候補のうち、ごく一部しか測定できていなかった。このため、産業用アプリケーションにおけるワイヤレス測定の需要は高いものの、一般的なポイントツーポイントのワイヤレスシステムでは、必要な信頼性を確保できず、独立した小規模なネットワークの用途にとどまっていた。

 時間同期メッシュネットワークの登場により、有線のシステムと同様の信頼性を備えた低消費電力のワイヤレスシステムが実現した。業界標準の「IEC 62591(WirelessHART)」として標準化されたので、産業用プロセス市場における相互運用性が確立された。例えば、Emerson Process Management、Siemens、Endress+HauserなどがIEC 62591に準拠した製品を出荷している。

 産業用プロセス業界の他、データセンターや商業用ビルの空調コストを最適化する方法としても導入されたケースもある。例えば、都心の駐車場の空き状況をリアルタイムにモニタリングする“スマートパーキングシステム”にも、時間同期メッシュネットワークが採用されている。このシステムでは、車両検知器が各駐車スペース下の舗装道路内の車道と同じ高さに設置されている。この場合、センサーのアンテナが地下にあり、駐車中は車体(金属)で覆われてしまうという問題が生じる。そのため、こういった用途にワイヤレスセンサーネットワークを応用することは難しいと考えられてきたが、時間同期メッシュネットワークを使用することで、導入が始まっている。


時間同期メッシュネットワークを使用した“スマートパーキングシステム”

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