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目を超えたイメージセンサー、人間と同じ物体認識ができるステレオカメラ……“コンピュータビジョン”の可能性DMP Computer Visionセミナーリポート(1/4 ページ)

ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)主催のセミナー「DMP Computer Visionセミナー2014」の基調講演に、ステレオカメラ「アイサイト」の開発者として知られる東京工業大学放射線総合センター准教授の実吉敬二氏が登壇した。本稿では、実吉氏らの講演を中心に、同セミナーの模様を紹介する。

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 2014年8月、東京都内でディジタルメディアプロフェッショナル(以下、DMP)主催のセミナー「DMP Computer Visionセミナー2014」が開かれた。本稿では、東京工業大学放射線総合センターの准教授である実吉敬二氏による基調講演や、ソニーのデバイスソリューション事業本部イメージセンサー事業部の本橋裕一氏による特別講演を中心に、主な講演の内容について、その概要を紹介する。

新型ステレオカメラは時速180kmでもぶつからない

 実吉氏は、「衝突しない自動車のためのステレオカメラ」をテーマに基調講演し、自動車はもとよりさまざまなロボットなどにも、物体や周囲環境を認識する重要なセンサーとして、ステレオカメラが活躍できることを示した。


東京工業大学放射線総合センターの准教授である実吉敬二氏

 冒頭、スバル研究所在籍中に開発した「ステレオカメラ」について、その背景などを紹介した。過去は「自動車を運転する人に事故を回避する責任がある」という認識が一般的であった。しかし、当時を振り返り、「これからは自動車自身が自動車を制御して、確実に障害物を回避することができる『ぶつからないクルマ』を、自動車メーカーが開発しなければならない、という認識に変わった」と話す。それは、「居眠りやわき見運転する人間より、機械で自動車を制御するほうが、より安全」との判断があったからだ。そして20年前の1994年に実吉氏は技術論文をまとめ、「衝突しない自動車」を提案した。

 周囲環境を認識するために用いられるセンサーは幾つかある。主なものとして「レーザーレーダー」、「ミリ波レーダー」、「単眼カメラ」、「ステレオカメラ」などがある。一方、衝突回避に必要な情報として実吉氏は、「物体の位置、特に境界の位置と相対速度」、「自車や他車の移動方向を判断するための車線や側壁、ガードレール、縁石などの道路境界」、「回避動作で新たな衝突を起こさないために、周囲にある駐車車両や歩行者、電柱、ポールなどの立体物」を挙げた。加えて、側道からの飛び出しやステアリングで回避するためには、横方向の空間分解能が高いほど、安全性を確保しやすくなるという。これらの条件から、物体境界の情報量が多く得られる「ステレオカメラ」を選択した。

3種類のセンサーで計測した情報量の違い(左)と、実用化されているセンサーの特性比較 (クリックで拡大) 出典:東京工業大学放射線総合センターの実吉敬二氏

 実吉氏は、「ステレオカメラは、人間が行う運転を支援するための機能である。例えば霧が発生している状態で走行すると、ステレオカメラでは前方にある物体を認識できないが、同じように運転者も物体を認識できない。このため、運転支援の機能としては大きな問題にはならないと聞いている。現時点で高いコストは課題だが、2015年には安価なステレオカメラが出てくるのではないだろうか」と語った。

ステレオカメラで距離測定

 次に、ステレオカメラの原理や、2台のカメラで取り込んだ画像から距離情報を取得する方法などを紹介した。物体までの距離は、(2台のカメラ間の距離×焦点距離)÷視差で求めることができる。ステレオカメラでは、右側の画像を8×4画素の小さな領域に分割し、領域ごとに同じパターンを左側の画像内から探して「視差」を求める仕組みだ。しかも、画素値の差の絶対値の和でスコアを求めるためのSAD(Sum of Absolute Difference)演算回路は、安価なFPGAを用いても十分な処理能力があるという。

右側の画像を8×4画素の小さな領域に分割し、同じパターンを左側の画像内から探して距離(視差)を求める (クリックで拡大) 出典:東京工業大学放射線総合センターの実吉敬二氏

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