目を超えたイメージセンサー、人間と同じ物体認識ができるステレオカメラ……“コンピュータビジョン”の可能性:DMP Computer Visionセミナーリポート(2/4 ページ)
ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)主催のセミナー「DMP Computer Visionセミナー2014」の基調講演に、ステレオカメラ「アイサイト」の開発者として知られる東京工業大学放射線総合センター准教授の実吉敬二氏が登壇した。本稿では、実吉氏らの講演を中心に、同セミナーの模様を紹介する。
立体物の検知
ステレオカメラを用いた立体物の検出についても具体例を紹介した。実吉氏は、「立体物を検出するには同じ距離の塊を見つけて、それが物体であることを認識すればいい。単眼カメラはパターンマッチングを行うため、人が頭を下げた状態だと、その物体を人と感知しないことがある。ステレオカメラであれば人でも物体でも立体物として認識することができる」という。
実吉氏は、ステレオカメラの距離精度についてもシミュレーション結果を示した。立物体が100m離れている場合、視差が「1」だけ変化すると測定される距離は約14m変化するという。ただ、遠方に立体物がある場合に、自動車と物体がぶつかるまでには、ある一定の時間がかかることを考慮してシミュレーションした。検証の結果、現行のステレオカメラを用いたシステムでは、時速100kmで走行しても物体の直前で停止できるという。さらに新型ステレオカメラを搭載した場合、時速180kmでもぶつからないことが分かった。
歩行者の検出についても模型を使って実験した。「黒い服を着た人」、「白い服を着た人」、「物陰からの飛び出し」などを想定して実験を行ったところ、いずれも歩行者を検出して車が停止できることを確認したという。この実験では、ステレオカメラが横方向の精度に優れている点を強調した。
最後に実吉氏は、ステレオカメラの将来性について、「2つの眼を使った立体画像認識は、人間やサルが行っている高度な認識法である。ステレオカメラもそこからヒントを得て開発した。今後は車載用途に限らず、さまざまなロボットにも物体認識能力や周囲環境認識能力が求められることになるだろう。その時に、ステレオカメラは最も重要なセンサーになると確信している」と述べ、講演を締めくくった。
IoT関連機器の登場で、イメージセンサー市場は10倍増に
ソニーの本橋裕一氏は、「ソニーのイメージセンサー技術」と題して特別講演し、ソニー製CMOSイメージセンサーのコア技術などについて紹介した。特に、「人間の眼の限界を超える性能を持ったイメージセンサーを目指して技術開発に取り組んでいる」と述べた。
本橋氏はまず、イメージセンサーとその応用機器の歴史に触れた。イメージセンサーの代表的な応用機器として挙げられるのは民生用ビデオカメラやデジタルスチルカメラ(デジカメ)、業務用ビデオカメラ、カメラ付き携帯電話機、医療用機器などがある。特に、1998年ごろからデジカメ市場が拡大し、カメラ付き携帯電話機、スマートフォンの普及もあってイメージセンサー市場は急速に拡大した。本橋氏は、「これからIoT(モノのインターネット)関連製品にもイメージセンサーが搭載されることになり、需要はさらに一桁上がる」との予想を紹介した。
こうした需要拡大に対応すべく、ソニーはイメージセンサーのウエハー生産能力を増強している。既に長崎テクノロジーセンターの設備増強を行い、山形テクノロジーセンターでの生産準備を急いでいる。本橋氏によれば、「イメージセンサーの製造能力は、300mmウエハー換算で、2010年12月には月産2万5000枚だったものが、2015年8月には月産6万8000枚となる」計画だ。積極的な設備投資で供給責任を果たしていく。
続いて本橋氏は、CMOSイメージセンサーに関連する3つの技術/製品を紹介した。
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