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「A8」と「Exynos 5430」を比較――性能/機能のApple、消費電力/コストのサムスン同じ20nmプロセスだけど異なる思惑(1/2 ページ)

Appleの「iPhone 6」と「iPhone 6 Plus」に搭載されるプロセッサ「A8」とSamsung Electronicsが「GALAXY Alpha」に搭載するプロセッサ「Exynos 5430」は、20nmプロセスを採用したデバイスであり、2014年9月に発売される端末から搭載が始まるという点で共通する。しかし、デバイスの中身をみると、両社の思惑の違いが見え隠れする。

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9月発売、20nmプロセスは共通……

 Samsung Electronics(サムスン電子)は間もなく、業界初となる20nmプロセスを適用したスマートフォン向けプロセッサ「Exynos 5430」を出荷する。

 一方Apple(アップル)は、2014年9月19日に発売された「iPhone 6」と「iPhone 6 Plus」に、独自開発した20nmプロセス適用プロセッサ「A8」を搭載した。

 SamsungのExynos 5430は、最初に同社の新型スマートフォン「GALAXY Alpha」に搭載されることになる。GALAXY Alphaの出荷開始時期については、Appleと同じく2014年9月中を予定しているという。ここで非常に興味深いのは、どちらのスマートフォンが先に出荷されるのかということではなく、AppleとSamsungの両社が、新しいプロセス技術をそれぞれ異なる狙いで用いているという点だ。

ロジック増やさず、ダイサイズも縮小


「Exynos 5430」が最初に搭載される「GALAXY Alpha」

 Samsungが20nmプロセスを適用した目的は、消費電力量の低減と、電池寿命の延長である。GALAXY AlphaのLTE-Advanced対応モデムをサポートするにはより多くの電力が必要であることから、それを補うためでもあるようだ。Intel(インテル)の開発戦略「Tick Tock」*)に例えると、Exynos 5430の場合は、アーキテクチャには大きな変化がなく、ダイサイズが縮小していることから、Tick Tockの「Tick」に該当する。

*)「製造プロセス技術の微細化」と「マイクロアーキテクチャの刷新」を毎年、交互に行う開発戦略。「製造プロセス技術の微細化」が「Tick」、「マイクロアーキテクチャの刷新」が「Tock」に相当する。

 Exynos 5430の設計は、前世代の28nmプロセス技術を適用したSoC「Exynos 5420」「Exynos 5422」と比べて、それほど大きく変化していない。いずれもBig.Little処理を採用し、Cortex-A15コアとCortex-A7コアを4個ずつ搭載する他、GPUも同じものを採用している。Exynos 5430の新機能としては、オーディオ処理セクションや、HEVC/H.265対応コーデックなどが挙げられる。しかし、Samsungが最も力を入れたのは、ロジックを大幅に追加することではなく、消費電力量を低減することだったようだ。

「A8」のゲート数は「A7」の2倍の20億個!

「A8」
「A8」のイメージ

 AppleのA8プロセッサは、さらなる性能向上を意欲的に試みたチップだといえる。A8の分解調査はまだ実施されていない(2014年9月18日時点)が、同社によると、A8のトランジスタ数は、A7の2倍となる20億個だという。A8のトランジスタ数はA7の2倍だが、そのダイ面積は89mm2で、A7の102mm2と比べて13%の縮小を実現している。

 28nmプロセスから20nmへの微細化によって、トランジスタの数は倍増したが、サイズが大幅に縮小したことから、A8の大きさはA7とほとんど変わらない。Appleは、64ビットCPUコア「Cyclone」のパッキングを改良し、トランジスタ数を追加してキャッシュメモリを増やしたことから、CPU/GPU向けに使われているロジックよりも密度を高めることに成功した。

 Appleは、トランジスタ数を10億個増やしたことにより、CPU性能を最大で25%、GPU性能を最大で50%、それぞれ高められたとしている。

 Appleによると、iPhone 6の電池寿命は、A7搭載のiPhone 5Sと同等もしくはそれを上回るという。CPUの性能向上を実現するに至った要素としては、CPU設計の改善や、キャッシュの増加、最高クロック速度の向上などが挙げられる。

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