長距離と超高速の用途で周波数帯を切り替え、デュアルバンド対応受信RFIC:無線通信技術 RFIC
三菱電機と東北大学は、比較的安価に製造できるSi-CMOS技術を用いて、マイクロ波帯とミリ波帯の受信回路を1チップに集積した、5GHz/60GHz帯デュアルバンド対応の受信RFICを開発した。
三菱電機と東北大学は2014年10月、比較的安価に製造できるSi-CMOS技術を用いて、マイクロ波帯(5GHz)とミリ波帯(60GHz)の受信回路を1チップに集積した5GHz/60GHz帯デュアルバンド対応の受信RFICを開発した。長距離通信と超高速通信を切り替えて使用するなど、複数の無線規格に対応できる無線通信システム用途に向ける。
開発した受信RFICは、スーパーヘテロダイン方式を60GHz帯受信回路に採用した。これにより、ダイレクトコンバージョン方式を用いた5GHz帯受信回路の周波数変換部と、一部回路を共有することが可能となった。この結果、1チップに集積した場合でも、チップサイズは2.9×2.2mmと小さく、回路面積を従来に比べて約30%も削減できたという。
シミュレーション技術により、開発コストの削減も図った。電磁界シミュレーションを活用することで、基板上にミリ波帯RFICを実装した時の電波経路を事前に予測し対策を施した。この結果、IC実装時の課題を容易にクリアすることが可能となり、ICの試作回数と開発コストの低減につながったという。
この他、局部発振器の周波数を60GHzの半分にすることが可能な偶高周波ミキサに関しては、三菱電機独自の構成を採用した。分布定数線路を用いているため、ミリ波に適しているからだ。これらの工夫により、無線信号から中間周波数への変換損失を低減することに成功した。
今回の開発は、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)「ディペンダブルVLSIシステムの基盤技術」における研究課題「ディペンダブルワイヤレスシステム・デバイスの開発」の成果である。なお、開発技術の詳細は、イタリアで開催中の国際会議「EuMW2014(European Microwave Week 2014)」(2014年10月5〜10日)において発表されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 三菱電機が“フルSiC”の家電向けパワー半導体を発売
三菱電機は2014年7月、SiC(炭化ケイ素)を用いたMOSFETとダイオードを使った“フルSiC”構成の家電向け小型パワー半導体モジュールを発売した。新製品は2014年7月23〜25日に開催される展示会「TECHNO-FRONTIER 2014」(東京ビッグサイト)で展示される。 - 三菱電機、2020年度売上高5兆円/営業利益率8%以上の新経営目標を発表
三菱電機は2014年5月19日、都内で経営戦略説明会を開催し、「パワーデバイス」「空調システム」「電力システム」などの8事業を強化し、2020年度(2021年3月期)までに売上高5兆円、営業利益率8%以上の達成を目指す新経営目標を打ち出した。 - フルSiCインバータとモータを一体化、EV用モータドライブシステム
三菱電機は、新開発のEV駆動用フルSiC(炭化ケイ素)インバータとモータを一体化した小型の「EV用モータドライブシステム」を開発した。モータドライブシステムの小型化を実現したことで、バッテリの設置空間や乗員の居住空間をより広く確保することが可能となる。