開発から量産までICのテスト環境を統一、NIの半導体テストシステム:NIDays 2014
日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)の半導体テストシステム「STS(Semiconductor Test System)」は、従来のATE(Automated Test Equipment)と比較して、システム拡張や仕様変更に柔軟に対応できる。ICの設計現場と量産現場で同じシステムを使えることもメリットだ。
National Instruments(NI)は、次世代のRF ICやミックスドシグナルIC向けに、計測/制御機器「PXI」をベースとする半導体テストシステム「STS(Semiconductor Test System)」を投入した。従来のATE(Automated Test Equipment)と比較して、システム拡張や仕様変更などにも柔軟に対応でき、テストコストを削減できる可能性が高い。ICの開発から量産まで、同じ測定環境で利用できるのも大きなメリットである。
NIの日本法人である日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は、2014年10月22日に東京都内で開催したプライベートイベント「NIDays 2014」の会場で、特定の半導体ユーザーを招き、ユーザー会を実施した。2014年8月に発表したSTSの特長や機能などを紹介し、参加者からの質問や疑問に答えた。
NIでセミコンダクタテスト部門のマーケットデベロップメントマネージャを務めるJoey Tun氏は冒頭、PXIベースの計測機器市場について述べ、「ボックス型計測機器の需要が一定規模となっているのに対して、PXIは右肩上がりで成長が続いている」と語った。NIのPXIシステム事業にも触れ、「現在は毎月1000のシステムを出荷し、1997年からの累計出荷は10万シャーシに達している。このうち、半導体ICのテストシステムとして900システムが稼働している。さらに、2014年から出荷を始めたSTSも既に50システムが稼働中だ」と語る。
自社で開発するしかない場合も
かつて、ATE業界には数多くのベンダーが存在していた。現在はほぼ大手2社に統合され、それ以外ではアナログICに特化した専門のテスターメーカーが存在する程度である。一方で最近のスマートフォンやタブレット端末などには、無線通信機能やさまざまなセンサー製品が搭載されたことから、RF ICやミックスドシグナルICの需要が拡大している。しかし、「これらのICチップを検査するユーザーは、限られたベンダーの中から、測定ニーズに近いテスターを調達するか、自社で開発するかの選択しかできなくなってきた」(Tun氏)。
また、スマートフォンなどに搭載されるICは、回路自体がより複雑になるとともに、デジタルI/Oに比べてアナログI/Oを搭載する領域が多くなっていることも、テストコストを押し上げる要因になっている、と指摘する。
開発と量産の両方で同じ装置を使用可能に
そこでNIは、次世代のRF ICとミックスドシグナルICにフォーカスして、PXIベースのSTSを製品化した。STSは、PXIモジュール式計測器とシステム開発ソフトウェア「LabVIEW」、そしてテスト管理ソフトウェア「NI TestStand」で構成されている。これらの機能を従来のATEのような筐体に収めた。Tun氏は、「PXIをベースとしており、開発現場で用いられているNIの測定器と同一のプラットフォームで、量産現場でもテストできる環境が整うことになる。ただ、操作性に関しては、生産ラインのテストエンジニアでも容易に使いこなせるように、既存のICテスターに近い形とした」という。
STSでは、「T1」、「T2」、「T4」の3種類のモデルを用意している。それぞれPXIが1台、2台、4台格納されている。測定するピン数やサイト数などによって接続する構成を変更することができる。さらに、研究開発から量産までテスト環境や測定データの一貫性を保てることから、市場投入までの開発期間を短縮することが可能となる。その上、柔軟なシステム構成が可能なことから、投資コストを最適化できるという。
ATEの仕様変更が必要な場合でも、オープンなアーキテクチャのSTSであれば、ユーザー側で比較的容易にシステム変更を行うことができ、装置の陳腐化への対応や仕様変更に伴うコストの削減などが可能になる。
会場では、早期導入ユーザーとしてSTSを活用しているADI(アナログ・デバイセズ)やIDT、インフィニオン テクノロジーズなどの事例も紹介された。いずれも、「テストコストの削減、テスト時間の短縮などで成果が得られた」と報告している。講演終了後には、STSによるテストのデモも行われた。
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