欧州市場はマイクロDC/DCコンバータ1本で攻める:小型/低ノイズで付加価値を高める(2/2 ページ)
一時、業績が悪化したものの、回復基調にあるトレックス・セミコンダクター。特に欧州での売り上げが順調に伸びているという。その要因として、小型と低ノイズにこだわったコイル一体型の「micro DC/DCコンバータ」を、需要のあるメーターやインフラ系の分野で着実に販売できる体制を整えてきたことが挙げられる。
車載で勝負するには、まだ準備が足りない
EETJ 欧州でのターゲット市場について教えてください。
芝宮氏 会社の方針として、車載は注力分野になっています。ただ、現在は、車載製品に関しては日本市場からの売り上げがほとんどです。欧州でも強化していかなくてはいけないと思っていますが、日本メーカーが欧州の車載市場に入っていくのはややハードルが高いのが正直なところです。欧州で車載部品を販売するには、例えば、AEC-Q100やTS1649といった規格の準拠など、それ相応の準備が必要になってきます。もちろん準備は進めていますが、規格関連では欧州の車載で使えるというレベルにはまだ至っていません。
というのも、例えばTS1649というのは製造ラインとして準拠しなくてはいけないので、本来、当社のようなファブレスメーカーは準拠することができないのです。ただ、そこは顧客にとっては関係のないところですよね。その製品が準拠しているのか、していないのか、それだけが重要になりますから。そこは、われわれも考え方を変えなくてはいけないと思っています。トレックスはファブレスメーカーですが、特殊なパッケージの一部をベトナムで製造していますし、テスト工程を持っているところもあります。こうした一部の製造ラインでTS1649を取得するといった方法も考えられますね。あとは、電源ICそのものは準拠していなくても、モジュールとして準拠していればよい、というケースもあります。
とにかく、まずは産業機器分野に注力し、きちんと体制を整えた上で車載分野を攻めていこうと考えています。
こだわることで、付加価値を高める
EETJ micro DC/DCコンバータの今後のラインアップについて教えてください。
芝宮氏 2014年度中か2015年初頭までに、耐圧60V、出力電流6Aという高耐圧、高電流の製品のリリースを予定しています。既存品は耐圧が30V前後ですが、DC/DCコンバータはより高耐圧、より高電流の方向に進んでいますので、ここがそろえば、ある程度どの分野でもカバーできると考えています。
microDC/DCコンバータでは、小型化、低消費電力化とともに低ノイズにもかなりこだわっています。低ノイズというのは、なかなかデータシートからは見えにくい部分なのですが、そこは営業担当がかなり頑張ってアピールしているところです。ノイズが低いということが評価され、セイコーウオッチのGPSソーラーウオッチにも採用された実績もあります。さらに、例えば「XCL219/220」(外形寸法は2.5mm×2.0mm×1.0mm)は、出力電流1Aの製品としては「世界最小」を自負しています。このように、何かの特性にこだわりを持たなければ、なかなか商品として付加価値を出せません。
より付加価値を高めたmicro DC/DCコンバータを開発するために、FAEを積極的に採用するなどして、日本と欧米を主体に設計/開発を強化していきます。
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