低電力デジタル編:低消費のマイコンと物体認識チップを披露:徹底プレビュー「ISSCC2015の歩き方」(10)(1/2 ページ)
今回のテーマは「低電力デジタル」。デジタル回路の消費電力を極限まで低減する技術などが紹介される。ウェアラブル機器やワイヤレスセンサー機器など、今後ニーズが高まると考えられる分野に応用できる技術だ。
ウェアラブルとワイヤレスセンサーの適用範囲を広げる
本連載が第10回を迎えたところで、ISSCCの講演テーマを再掲しよう。第3回からは、以下の各テーマに従って注目講演を紹介してきた。
- アナログ
- データ変換
- RF(高周波)
- ワイヤレス通信(無線通信)
- ワイヤライン通信(有線通信)
- イメージセンサー/MEMS/医療/ディスプレイ(注:ISSCCではIMMDと略記する)
- 高性能デジタル
- 低消費電力デジタル
- メモリ
- 将来技術(テクノロジディレクション)
今回のテーマである「低電力デジタル」は10本中の8番目(といっても順序に意味があるわけではない)に相当する。
デジタル回路の消費電力を限界近くにまで下げる技術、あるいは、消費電力を極めて低い水準に抑えたデジタル回路に関する講演をまとめたのが「低電力デジタル」である。最近のデジタル半導体チップは、ほとんど全てが消費電力の低減に努めていると言える。ここで発表されるのは、その中でも特に低い消費電力を達成する半導体チップや、高度で複雑な消費電力管理を実行する回路技術である。
応用分野にはウェアラブル機器やワイヤレスセンサー機器、車載機器などがある。バッテリー1個で数年間にわたって機器を動かしたり、さらにはバッテリーレス(ワイヤレス給電、エネルギー・ハーベスティング)で機器を動かしたりする。
このテーマに関しては2つのセッションが予定されている。セッション8(サブテーマは「低消費電力デジタル技術」、2015年2月24日火曜日午前8時30分開始予定)と、セッション18(サブテーマは「モバイル、物体認識、センシング、通信向けのSoC」、2月25日水曜日午前8時30分開始予定)である。
状態保持電力が100nWクラスの低消費マイコン技術
セッション8(サブテーマは「低消費電力デジタル技術」)では、消費電力を極めて低く下げたマイクロコントローラ(マイコン)の講演に注目が集まりそうだ。英国のARMとインドのTexas Intrumentsがそれぞれ、消費電力が非常に低いマイコンを発表する。
ARMは、32ビットCPUコア「ARM Cortex-M0+」の電源電圧をサブスレッショルド電圧付近にまで下げて動かすことで、極めて低い消費電力を実現した技術を報告する(講演番号8.1)。電源電圧を0.25Vと低く下げたときに29kHzの周波数で動作し、850nWと低い消費電力を達成した。電源電圧を0.90Vに上げると、66MHzと高い周波数で動く。CPUとSRAMの状態保持に必要な電力は80nWと低い。サイクル当たりの消費電力エネルギーは11.7pJ。製造技術は65nmのCMOS技術である。
Texas Instrumentsは、動作周波数当たりの消費電流が10.5μA/MHzと低いフラッシュメモリ内蔵マイコン(フラッシュマイコン)技術を発表する(講演番号8.3)。動作周波数は16MHz。CPUとSRAMの状態保持に必要な電流は108nAである。マイコンのアーキテクチャは「MSP430」。製造技術は90nm。
この他、米国のIntel(講演番号8.6)とイスラエルのIntel(講演番号8.7)がそれぞれ、オンチップの電源制御技術を報告する。
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