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地球温暖化の根拠に迫る世界を「数字」で回してみよう(11) 環境問題(4/5 ページ)

今回は、二酸化炭素(CO2)がどのように地球を暖めるのか、そして、「2100年には、最悪で平均気温が4.8℃上昇する」という説に根拠があるのかを検証したいと思います。地球温暖化の仕組みは、太陽と地球をそれぞれ「ラジオ放送局」と「ラジオ受信機」と考えると分かりやすくなります。

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太陽からもらったエネルギーは、宇宙に全部返却する

後輩:「さて、温室効果を理解する上で、基本中の基本の考え方に『簡略化温室効果モデル』というものがあります。かなり乱暴な簡略化をしていますが、一応、理屈は通っていて、厳密な値は分からないまでも、おおむね現実の温度とも一致するので、ざっくりしたスケール感は出せます」
江端:「どんな感じの式?」
後輩:「こんなのです」


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江端:「えらく簡単なモデルだなぁ……」
後輩:「考え方は、『太陽からもらったエネルギーは、宇宙に全部返却する』です」
江端:「全部返却したら、地球温暖化はしないんじゃないの?」
後輩:「全部返却しないと、地球はいずれ灼熱(しゃくねつ)地獄になってしまいますよ。熱を吸収しつつ、返却すればいいのです。地球の温度は、その吸収率fの値で決定されます。計算結果は、こんな感じになりました」

吸収率f(%) 地表温度 Tg(℃) 温室効果(℃)―(吸収率73%からの比較)
0 −16.3 −30.9
73(現在) 14.5
74 15.1 0.6
75 15.7 1.1
76 16.3 1.7
77 16.8 2.3
78 17.4 2.9
79 18.0 3.5
80 18.6 4.1
100 32.2 17.7

江端:「つまり、吸収率が1%上がると、ざっくり0.6℃温度が上昇する、という感じかな」
後輩:「単純なモデルなので、必ずしも一致するわけではないのでしょうが、少なくとも吸収率と温度上昇は、線形的な相関がある、ということは言えそうです」
江端:「IPCCの“2100年には、最悪で平均気温が4.8℃上昇する”の“最悪予想”に当てはめるとどうなるんだっけ?」
後輩:「このモデルだけで考えると吸収率は81.1%。現在から8%以上、上昇することになります」
江端:「じゃあ、これまでは?」
後輩:「諸説あるようですが、ある文献によれば、CO2の比率が0.028%(250年前)から、0.040%(現在)に至るまで、吸収率fの増加量は0.2%くらいですね」
江端:「これまでが0.2%で、これから8%? ……すごい開きがあるなぁ。新興国のCO2が爆発的に増加するということかな。まあ、IPCCは、こんな『簡略化温室効果モデル』よりも、もっと高度で複雑な計算しているのだろうけどね」

後輩:「要するに、『CO2が増加する→吸収率fが増える→地球が温暖化する』というところまではいいのですが、『CO2が増加する→吸収率fが増える』の関係が、まだよく分かっていないんです(と言いながら、ホワイトボードに3つのパターンを記載)」

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江端:「まあ、直感的には、吸収する物体(CO2)が増えれば、吸収率fが比例して増える、と思うよなぁ」
後輩:「その一方で、吸収する物体(CO2)がどんなに増えたって、CO2が吸収できる赤外線の種類(吸収バンド)は限られているのだから、吸収率fは一定の値で飽和する、という説も、説得力があります」
江端:「ま、取りあえず、いくつかのパターンで計算してみるよ」

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