インテル、マイクロソフトがひそかに狙う「遺伝子組み換え技術」:新技術(1/2 ページ)
遺伝子をプログラミング、つまり組み換えることで、環境分野や医療分野に役立つバクテリアやウイルスを作り出す研究開発に、インテルやマイクロソフト、オートデスクなどの大手企業が乗り出している。
微生物とエレクトロニクスの融合
IntelやMicrosoft、Autodeskは、微生物を“プログラミング”する研究にひそかに投資し、それぞれ、微生物とエレクトロニクスの融合を目指しているようだ。3社の共通する狙いは、同様の技術を既に手掛けているMicrobial Roboticsに追い付くことである。
Microbial Roboticsは、人間が生物学的には対処できないような仕事を実行することを想定して、特殊なバクテリア「BactoBots」とウイルス「ViruBots」の開発を続けている。例えば、汚水から毒素を排除する、がん細胞のみを探し出して破壊する、無公害燃料を生成する、微生物とエレクトロニクスを融合した新物質を作り出すといったことが挙げられる。
Microbial Roboticsは、特に環境および医療分野をターゲットに、既に8社のスピンオフを設立している。同社のCEOであるJason Barkeloo氏はEE Timesに対し、「(例えるなら)バクテリアとウイルスがハードウェア、DNAがOS、遺伝子がアプリケーションソフトウェアだ。DNAの核酸塩基(アデニン、チミン、シトシン、グアニン)の操作は、バイナリプログラミングに相当する」と述べている。
もう1つ、Microbial Roboticsの特殊なところは、「Gene Rights Management(GeRM)」というデジタル著作権管理(DRM)を作った点だ。GeRMは、BactoBotsとViruBotsに必要な消耗品(ある分子)を加えることで機能するという。GeRMがなければBactoBotsとViruBotsは成長や再生を止め、最終的に死に至ることになる。
Microbial Roboticsの研究開発によって、自然淘汰(とうた)*)を模倣し、数カ月のうちに生物を“プログラミング”することが可能になった。本来、自然淘汰には途方もなく長い年月がかかるものだ。将来的には、生物をゼロから創造できるようになる可能性もあるという。現時点では、Microbial Roboticsは既存のバクテリアやウイルスに、それら自身のDNAを挿入することで、いろいろなタスクを実行できるようにしている。
*)自然選択説ともいう。自然界において、環境変化などに適応していくものは生き延び、適応できないものは滅びいくこと。
Microbial Roboticsはあらゆる企業を対象に、同技術と、ViruBotsやBactoBotsを開発するためのトレーニングを有償で提供する計画だ。既に世界各地で複数の企業がそれらの提供を受けているという。企業がGeRMシステムをサポートする限り、それらの企業が独自に開発したBactoBotsとViruBotsは盗用(クローニング)から守られる。だが、Microbial RoboticsのIP(Intellectual Property)を購入した企業がGeRMシステムから抜けることも可能だ。また、同システムを用いて生体をゼロから創造したり、遺伝子組み換え生物(GMO:Genetically Modified Organism)を作ったりすることもできる。
Barkeloo氏はEE Timesに対し、「現段階では、当社がGMOを行うのはバクテリア(BactoBots)とウイルス(ViruBots)のみで、植物に対しては行っていない」と説明する。
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