“発電する窓”の実現へ、透明な有機太陽電池:プリンタブルエレクトロニクス2015
山形大学は「プリンタブルエレクトロニクス2015」で、透明な有機薄膜太陽電池を展示した。“発電する窓”など、新しい市場を開拓できる可能性がある。
山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンターは「プリンタブルエレクトロニクス2015」(2015年1月28〜30日、東京ビッグサイト)で、透明な有機薄膜太陽電池を展示した。同センター、伊藤電子工業、ヤマトテックが共同で開発しているもの。住宅の窓やブラインド、カーポート、自動車のルーフやダッシュボードなどへの応用が期待されている。
有機エレクトロニクスイノベーションセンターと伊藤電子工業は、陽極(金属電極)に特殊な透明材料を使うことで、透明な有機薄膜太陽電池を実現している。厚さは1μmもない。
有機薄膜太陽電池は、フレキシブルな太陽電池を実現できるとして注目を集めている。変換効率が10%を超えるものも出てきた。
透明というのは、太陽光が通過するので、電力に変換できるはずのエネルギーの多くを捨ててしまうという行為でもある。説明担当者は、「変換効率と出力を上げるには、人間の目では捉えられない波長の光、具体的には700nm〜800nm以上の赤外線を効率よく吸収するような材料を開発する必要がある」と話す。有機エレクトロニクスイノベーションセンターは、有機薄膜太陽電池の出力を、2017年までに100W/m2まで上げることを目指しているが、これは「かなり難しい」(担当者)という。「現状は、目標の100W/m2よりも1桁下がるくらいの出力しか達成できていない」(担当者)。
ただ、透明な有機薄膜太陽電池への期待は強いようだ。説明担当者によれば、「ハウスメーカーからの関心が特に強い。他にも高速道路の防音壁に取り付けたいなど、意外な分野からの引き合いもある」という。潜在的な市場規模は、住宅窓市場では推定500億円(国内)、車載用サンルーフ市場では推定1000億円(世界全体)など、新しい市場の開拓/拡大の可能性もある。
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