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「経験で設計すると失敗する」、ルネサスが提示する16nm FinFET SRAMの課題:メモリ/ストレージ技術(2/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは、16nm FinFETプロセスを用いてSRAMを試作したと発表した。プレーナ型MOSFETを使う場合に比べて低い動作電圧で高速読み出しに成功しているが、一方でFinFETと、微細化プロセスを用いたことによる課題も増えている。
アシスト回路を開発
ただし、FinFETの導入と、プロセスの微細化によって新たな課題も出ている。それがデバイス素子のばらつきだ。ばらつきが増大することで、デバイスの下限動作電圧特性が悪化する傾向があり、その対策として回路的に工夫する回路技術(以下、アシスト回路)が導入されている。従来は、読み出し動作時の安定動作を確保するため、アクセス時にワード線の電圧をわずかに下げる工夫をしていた。しかし、この方式では、書き込み時の動作マージンの悪化や、読み出し速度が著しく低下するなどの課題があった。
これに対し、ルネサスは、FinFETの特徴を生かし、これまでとは逆にワード線電圧をわずかに昇圧(オーバードライブ)し、読み出し時と書き込み時でそのパルス幅を変えるというアシスト回路方式を採用。これにより、読み出し時と書き込み時の動作マージンを確保しつつ、高速な読み出し動作を実現した。
新アシスト回路の概要。左が従来の技術で、右の赤枠内が新しいアシスト回路技術。ワード線の電圧を少しオーバードライブさせることで、読み出しの速度が向上する(クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス
今回のアシスト回路技術は、オーバードライブして、かつ短いパルスにした点が鍵だという。「プレーナ型MOSFETでは、ワード線の電圧を上げると読み出し性能は悪くなる。だが、FinFETではPMOSが強くなり読み出し側に十分なマージンができる。そのため、ワード線の電圧を上げられる」(新居氏)。
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