5Gに向けた取り組み、欧州ではまだ足並みがそろわず:ビジネスニュース 業界動向(1/2 ページ)
欧州委員会(EC)は「MWC 2015」で、欧州における5G(第5世代移動通信)の現状について説明した。欧米の通信事業者は2020〜2025年に5Gの実用化を目指しているが、現時点では、まだ欧州連合(EU)諸国の足並みがそろっておらず、無線通信市場が“細分化”している状態だという。
欧州委員会(EC:European Commission)が、「5G Infrastructure Public Private Partnership(5G PPP)」の参画メンバーであるAlcatel-LucentやNTTドコモ、Ericsson、Nokia、Orange、Qualcomm、Thales Alenia Spaceなどのメーカー各社と共に、欧州の5G技術/インフラに関する今後の見通しを明らかにした。2020年までには、人や機械によって利用される無線通信技術の急激な成長にも対応できるようになる見込みだという。
ECのデジタル経済・社会担当委員であるGünther H. Oettinger氏と5G PPPメンバー企業のCEO(最高経営責任者)たちは2015年3月2日、「Mobile World Congress(MWC) 2015」(スペイン バルセロナ、2015年3月2〜5日)において、欧州委員会および5G PPPの主催による記者会見を行った。
Oettinger氏は冒頭のあいさつの中で、「欧州連合(EU:European Union)がこれまでに資金を提供してきたさまざまなプロジェクトによって、技術革新が進んだ」と称賛の言葉を述べた。こうしたプロジェクトには、METISや5GNOW、iJOIN、MIWEBA、CREW、EVARILOSなどがあり、MWC 2015の会場でも紹介された。この中でも5GNOWは、既に新しい無線アクセス技術に関する重要な成果を達成している他、METISも主要な利用シナリオや関連技術、アーキテクチャなどを提供しているという。
また、NokiaやEricssonなどの欧州の業界パートナー企業は、より高い周波数帯を使用することによって、1.2Gビット/秒を上回るデータ伝送速度を実現できる可能性があることを実証している。
こうした技術革新は、ECが、5G関連の研究を行うために始動させた第7次枠組計画(FP7)に基づき、5000万ユーロを投じてきた成果だといえる。EUは、2020年までに7億ユーロを投資する予定だとしているが、このうちの1億2500万ユーロを投じるプロジェクトについて、2015年3月中に発表する予定だという。またOettinger氏は、パートナー企業各社に対し、5Gの実現に向けた24億ユーロの追加投資について謝意を述べた。
同氏は、「欧州は、産業基盤やノウハウの他、優れた研究チームにも恵まれているため、将来的に5Gインフラを実現できるだろう。5G関連の国際標準規格を1種類だけにすることができれば、規模の経済や範囲の経済を拡大して、未来のデジタル社会/経済を実現できると確信している」と述べている。
欧州における5G関連の展望の詳細については、以下の通り。
- 主なけん引要素
5Gは壮大な事業であり、新たなサービスや機能を備える新型ネットワークが必要であろうことは誰もが認めるところだ。膨大な数のセンサーや機器を接続するIoT(モノのインターネット)市場では、今後、新しいサービスが爆発的に増大するとみられている。こうした状況に対応すべく、既存技術と新技術とを融合しながら、5Gを実現する必要がある。 - 設計原理
インフラには、適応性や持続可能性、拡張性の他、低消費電力化や、電池不要機器の導入などにも対応可能であることが求められる。 - 主な技術要素
5Gネットワークは、光/セルラー/衛星ソリューションを包括する必要がある。インフラと周波数帯を効率よく使うためには、SDN(Software Defined Networking)、SON(Software Optimization Networks)、NFV(Network Functions Virtualization)、MEC(Mobile Edge Computing)、FC(Fog Computing)などの技術を取り入れる必要がある。 - 周波数帯について
周波数帯の割り当てについては、必要な周波数帯を全ての市場で同時期に開放できるよう、各国の政府が協力して動かなくてはならない。標準規格の策定に向け、5大陸での強固な連携が不可欠になるだろう。 - 実用化のメド
欧州の通信事業者の多くは、2020〜2025年の間に5Gの実用化を目指している。
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