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京都議定書を「トイレ」と“あれ”で説明しよう世界を「数字」で回してみよう(13) 環境問題(6/9 ページ)

今回は、いよいよ環境問題シリーズの最難関である「京都議定書」を、比喩を使って解説したいと思います。おそらく、こんな比喩を用いて京都議定書を説明した例は、かつてなかったのではないでしょうか。なお、お食事中の方は、本稿を読むのをお控えください。

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共同実施(JI)

 ところで、わが国日本は、ウンコの量の削減と、それに伴うトイレ(の便槽)のダウンサイジングのスペシャリストでしたよね。

 ならば、日本が協力して、外国にそのノウハウを教えて便槽からウンコの流出を防いでもよいわけです。このメカニズムが「共同実施(JI)」です*1)

*1)正確には「開発」の他に「投資」「債券」も含むのですが、話を簡単にするため、このまま話を押し通します。

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 共同実施(JI)は、排出権取引と同様に、数値目標を持った(持たされた)国同士で行えるものです。

 「日本は、削減義務のある国のウンコの量を減らして、その国のトイレ(の便槽)に余裕ができたら、その分、その国のトイレでウンコしてもよい」というものです。

 この場合、その国は、日本にウンコをさせてしまったら、自分の国が自分の分のウンコすることができませんので、ウンコの総量としては変わりません。これでは、世界全体としての温暖化ガス削減に対して、何のメリットもないようにも思えます。

 しかし、日本としては、日本のトイレ(の便槽)はもう満杯ですし、これ以上の便槽の改良をしていたらばく大なお金がかかります。

 それなら、他国でウンコ削減の技術指導と、トイレ(の便槽)の製造技術を伝授した方が安いですし、何より、そのトイレで安心してウンコできるというメリットがあります。一方、他国としては、日本のCO2削減技術や装置をタダでもらった上に、日本円という外貨を獲得できます。なかなかうまいやり方です。

米国“おはこ”の口八丁手八丁

 これに対して、数値目標を持たされている先進国と、数値目標を持っていない削減義務のない発展途上国の間で、共同実施(JI)と同じことをするものが、クリーン開発メカニズム(CDM)です。

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 同じことをするなら、同じ名前でいいじゃないのか、と思うのですが、ちょっと違うところは、数値目標がなく削減義務のない国(つまりトイレ(の便槽)がない上に、どこにどれだけウンコをしても構わない国)との間で実施する点になります。つまり、「日本は、その削減義務のない国にトイレを作ったら、そのトイレでウンコしてもよい」ということです。

 数値目標を持つ日本のメリットは、共同実施(JI)とあまり変わりませんが、数値目標のない削減義務のない国の方は、日本が格安でウンコ削減指導をしてくれて、さらにトイレまで作ってくれるのですからうれしいはずです。

 しかし、それ以上に、このクリーン開発メカニズム(CDM)は、世界全体から見ると、大変な意義がありました。なぜなら「努力することで、後発的に排出枠を増やすことができる」からです。

 当初、京都議定書で削減義務を持つ予定がない発展途上国は、「先進国のやつら、俺達の国でウンコしようとしてやがるぜ。そうはさせるか」と息巻いて共同実施(JI)すら反対していました。実際、米国は中南米諸国のトイレを当てにしていましたし、EUは東欧諸国のトイレを当てにしていたのです(比して、当時、日本はトイレを当てにできる国はありませんでした)。

 当初、ブラジルが「先進国が目標値に届かなかったら、ペナルティとして金を払って、途上国の温暖化対策に使えるようしろ」という主張をしていたのですが、ここで米国が口八丁手八丁で、見事なパラダイムシフトを展開して見せたのです。

 つまり先進国に「後発的なペナルティ」を課すのではなく、

  • 「先行的な発展途上国へ投資させる(トイレを作ること)」と言い、

 一方、先進国に対しては

  • 「世界の多くの国を参加させる(発展途上国への投資)」
  • 「ゼロからの排出枠を生み出す仕組みを作る(事実上の排出枠の拡大)」

という、玉虫色の話に変えてしまい、参加国をうまいこと丸め込んでしまったのです。

 これが、クリーン開発メカニズム(CDM)が「京都サプライズ」と呼ばれている所以(ゆえん)です。

 ところが、このCDMというトイレですが、日本は、発展途上国に新規の植林、または再植林などで対応しようとしました(日本は森林資源に対するノウハウもありますから)。しかし、発展途上国からは、「植林なんか辛気臭いもんはいらんから、工場とか生産技術とか、もっと派手に儲かるもんで支援してくれ!」と言われたそうです。

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