京都議定書を「トイレ」と“あれ”で説明しよう:世界を「数字」で回してみよう(13) 環境問題(7/9 ページ)
今回は、いよいよ環境問題シリーズの最難関である「京都議定書」を、比喩を使って解説したいと思います。おそらく、こんな比喩を用いて京都議定書を説明した例は、かつてなかったのではないでしょうか。なお、お食事中の方は、本稿を読むのをお控えください。
CO2削減における日本のマジック
では、そろそろ先ほど述べた、「日本は、CO2排出量が増えているのに、CO2の削減はできている(しかも目標6%に対して8.4%の過達)」のマジック(トリック?)の話をさせていただきます。
言うまでもなく、日本は目標達成のために、この「京都メカニズム」を使い倒したのです(参考資料:京都議定書目標達成計画の進捗状況)。
概要は以下の通りです。
基準年である1990年に対して、2008年から2012年までの5年間の平均で
- 温室効果ガス排出量:プラス12.78億トン(1990年から1.8%の増加)
- 国内の森林による吸収:マイナス0.49億トン
- 京都メカニズムクレジット:マイナス0.74億トン
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基準年1990年の排出量が、12.61億トンでしたから、11.56÷12.61=91.6%→マイナス8.4%で、当初の目標、マイナス6%をクリアという結果になっております。
気を付けていただきたいのは、必ずしも日本の政府や企業が、自ら直接、ウンコの量を減らす技術開発を行ったわけではなく、そういう技術開発に対する投資を、債券(京都メカニズムクレジット)として購入したりしていました。
そういう話になると、「やっぱり排出権をお金で買っているじゃないか」ということにもなるかもしれません。
ただ、私の所感ですが、上記の数値を見ている限り、「日本が金にものを言わせて、世界中にウンコしてきた」という感じは、あまりしないです。
日本は、1990年の排出量の5.9%分(0.74億トン÷12.61億トン)を購入しただけです。仮に、日本が国外から排出権を買ってこなくても、日本の排出量は1990年と同程度に納まっていたことになります。私には、これはものすごいことに思えるのです。
なぜなら、日本の電力消費量だけを見ても、日本は1990年から1.37倍も増えているからです(10億5644万652kWh(2014年)÷7億6556万8692kWh(1990年))。ですから、排出量は4割くらい増えていても不思議ではないのに、これをマイナス8.4%にまで持ち込んだという努力は、もっと評価されてもいいのではないでしょうか。
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