普及進まぬ3G網、サムスンの苦戦――東南アジアの通信事情:ビジネスニュース 業界動向(1/2 ページ)
スマートフォンの普及拡大の鍵を握る新興国の1つである東南アジア。同地域ではWi-Fiが急速に普及する一方で、3G/4Gの導入が進んでいない。また、1万円程度のローエンドスマートフォンを販売する地元メーカーの台頭でSamsung Electronicsが急速にシェアを失うといった動向が見られる。
先進国では既に飽和状態にあるスマートフォン。出荷台数の拡大の鍵は新興市場が握っているが、そうした市場の1つとして注目を集めているのが東南アジアだ。情報通信総合研究所は2015年3月12日、東南アジアにおける通信事情について説明した。
プリペイドと中古端末
東南アジア(東南アジア諸国連合[ASEAN])の携帯電話市場には、大きな特徴がある。プリペイド携帯電話と中古端末が圧倒的に多いということだ。複数のSIMカードを所有するユーザーも多い。通信事業者はSIMカードを販売する際に「30分通話無料」「20通ショートメール無料」といったキャンペーンを打ち出すが、無料分を使い切るとそのSIMカードは利用せずに、また新しい無料キャンペーン付きのSIMカードを購入する、という傾向が強いからだ。
情報通信総合研究所 グローバル研究グループで副主任研究員を務める佐藤仁氏は、「通信事業者は、こうしたキャンペーンを次々に行うことで、顧客獲得競争に躍起になっている」と説明する。このように、1人のユーザーが何枚もSIMカードを所有している背景から、携帯電話機の人口普及率としては100%を超えている国がほとんだ。ちなみに、「日本における携帯電話機の人口普及率は100%を少し超える程度である」(佐藤氏)。
中古端末は今でも大量に出回っていて、10年以上前の中古端末が今でも利用されているという。
地元メーカーの台頭、サムスンのシェア急落
Android端末の登場に伴い、スマートフォンも急速に普及している。台頭しているのは「iPhone」や「Galaxy」ではなく、中国や東南アジアメーカーのスマートフォンだ。理由は単純で、安価だからである。佐藤氏は、「ユーザーがスマートフォンを使う理由としては、電話、ショートメール、SNS(Social Networking Service)など、どの端末でも同じようにできるものばかり。iPhoneやGalaxyでなければできない機能を使うわけではない」と説明する。
東南アジアでは、中国メーカーや、インドネシアのNexianやMito Mobile、タイのi-mobileなどが、1万円程度の安価なスマートフォンを次々に投入している。女性の社会進出が著しいインドネシアでは、Nexianが、白を基調にしてビーズでデコレーションしたような、女性向けの携帯電話機を投入し、これが爆発的なヒットとなった。こうしたニーズをくみ取れるのも地元メーカーの強みだ。なお、タイやマレーシアでは中国メーカーのOPPOの勢いが強いという。その他、Lenovo、ASUS、HTCなども人気があるという。
これによってシェアが大幅に低下しているのがSamsung Electronicsだ。さまざまな市場調査会社が「スマートフォン市場におけるSamsungのシェア低迷」を報告しているが、佐藤氏も「実際に不調だ」と分析する。「2014年くらいまではまだ人気があった。だが、(Galaxyが)売れていた場所でローカルメーカーが台頭し、Samsungのシェアは軒並み落ちている」(同氏)。
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