RL78マイコンが3倍速くなるコンパイラを発表――ルネサス:プロセッサ/マイコン
ルネサス エレクトロニクスは2015年4月16日、16ビットマイコン「RL78ファミリ」用の新しいCコンパイラ「CC-RL」を発表した。既存のRL78の処理性能を3倍高速化できるという。
割り込み応答は6倍に
ルネサス エレクトロニクスは2015年4月16日、16ビットマイコン「RL78ファミリ」用の新しいCコンパイラ「CC-RL」を開発し、同年4月20日から発売すると発表した。同コンパイラを使用することで、既存のRL78の処理性能を3倍高速化できるという。
ルネサスによると、標準的なC言語規格である「ANSI-C」に準拠のプログラムであれば、改変することなくそのまま新コンパイラでコード変換するだけで、従来コンパイラよりもマイコンとしての処理性能を3倍高速化できるとする。さらに、割り込み応答性能も従来比6倍に高速になり、コードサイズについては、従来比1割削減できるという。
ルネサスでは、「旧来のRL78向けコンパイラは、限られたメモリ容量に多くのプログラムを格納するため、コードサイズを削減することに重点を置いて開発していた。新コンパイラでは、メモリ容量が大きくなったことを受け、処理性能の高速化に重点を置き開発を進めた。RXファミリやRHファミリなど他マイコン用コンパイラで得た技術ノウハウの応用も進めることで、より処理性能を高められるコードの生成を実現した」としている。
コードサイズは従来比10%小さく
CC-RLは、ルネサスの統合開発環境「CS+」の他、Eclipseベースの統合開発環境「e2 studio」と組み合わせて使用することが可能。従来のコンパイラからのプログラムを移植する「移行支援機能」を搭載し、「従来のソフトウェア資産を有効に活用できる」(ルネサス)としている。
CC-RLには、スタンダード版とプロフェッショナル版の2種類があり、プロフェッショナル版には、自動車に搭載するC言語ソフトウェア向けのガイドライン「MISRA-C:2004」の項目チェックをコンパイル時に自動的に行う機能などが搭載される。
処理性能が向上することにより、従来と同じ処理速度でマイコンを動作させれば、電力消費の小さい待機時間を増やすことができ、マイコンとしての総合的な消費電力も抑えられる。
ルネサスでは、「家電や産業機器などのモーターを搭載したシステムでは、多機能化や高性能化が進んでおり、マイコンの高速処理が求められている。一方、ヘルスケア機器や火災検知器など、バッテリーで駆動するシステムでは長時間の駆動が求められるため、マイコンの低消費電力化の要求が高まっている。こうした高性能化と低消費電力化という両方のニーズに応えるため、RL78の低消費電力性能を生かし、さらなる高性能化を実現するCC-RLを開発した」としている。
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