ムーアの法則、50年をたどる:半導体技術 進化の源(1/2 ページ)
1965年、IntelのGordon Moore(ゴードン・ムーア)氏が雑誌に掲載したトランジスタに関する予見は、「ムーアの法則」として半導体技術の発展の大きな原動力となった。ムーアの法則によってトランジスタがどれほど進化してきたのか。50年を振り返ってみる。
エレクトロニクス系の雑誌「Electronics」に、Gordon Moore(ゴードン・ムーア)氏の半導体技術に関する予見、いわゆる「ムーアの法則」が掲載されたのは、1965年4月19日のことだ。それからちょうど半世紀が過ぎたことになる。「半導体の集積密度は、18〜24カ月で2倍になる」というこの予測は、半導体技術だけでなく、社会の発展に大きく貢献してきた。
性能は3500倍、コスト単価は6万分の1に
1971年、Intelは世界初の4ビットプロセッサ「4004」を発表した*)。3×4mmのダイに2300個のトランジスタを集積し、10μmプロセスで製造されたものだ。その4004に比べると、現在の第5世代「Core」プロセッサファミリは、性能(トランジスタレベルの性能)が3500倍に、電力効率は9万倍に向上、コスト単価は6万分の1に縮小しているという。
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50年でこれだけ速い進化を遂げたものは、多くないだろう。インテル日本法人の副社長である阿部剛士氏が、ムーアの法則50周年を記念して開催した発表会で、面白い例えをいくつか挙げてくれた。
例えば、自動車だ。1971年に北米に投入された、フォルクスワーゲンの「スーパービートル」のエンジンを基準に考えると、もし自動車技術がムーアの法則と同じスピードで進化したとすると、速度は3500倍(時速約48万km)に、エネルギー効率は9万倍(85万km/l)に、コストは6万分の1(約4円)になっていたという。「地球を5分で1周し、一度給油すれば買い替えるまで二度と給油が必要なく、数円のエンジンを搭載した自動車が登場しているはずだった」(阿部氏)。さらに、もし自動車がトランジスタと同じ速さで小型化したとすると、今ごろ自動車のサイズはアリほどになっていたという。反対に、例えば現在のスマートフォンに搭載されているプロセッサの性能を1971年の技術で実現した場合、その大きさは現在の自動車ほどに達してしまうそうだ。トランジスタの進化が、いかに速いかが分かるだろう。
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