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ARMから見た7nm CMOS時代のCPU設計(11)〜回路の遅延時間を変動させるさまざまな要因福田昭のデバイス通信(22)(1/2 ページ)

今回は、回路の遅延時間を左右する要因について紹介する。例えば、コンタクト抵抗、しきい電圧、電源電圧、温度などがある。しきい電圧と温度、電源電圧と温度が遅延時間に与える影響はかなり複雑だが、その対処法として、DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)技術が挙げられる。

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微細化によってコンタクト抵抗の影響が増加

 トランジスタやコンタクト、金属配線などの寄生素子である「抵抗(R)」と「静電容量(C)」は、回路の遅延時間を大きく左右する。微細化が進むと、これらRとCの変化が遅延時間に与える影響が変化する。

 例えばコンタクト抵抗である。28nm世代の回路では、コンタクト抵抗が2倍に増えたときに遅延時間は4%ほど長くなった。これが7nm世代の回路になると、コンタクト抵抗が2倍に増えたときの遅延時間の増大は、約9%に悪化する。遅延時間の増加を4%に抑えるためには、コンタクト抵抗の増大を1.5倍にとどめておかなければならない。

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コンタクト抵抗の増加と遅延時間の増大(クリックで拡大) 出典:ARM

 コンタクト抵抗の影響は、物理的なレイアウトによっても変わる。例えばインバータ回路である。最も小さなレイアウトの場合、1個のトランジスタの電流を1個のコンタクトが引き受ける。ところがゲートピッチを増やして電流駆動能力を高めたレイアウトだと、1個のコンタクトが2個のトランジスタの電流を受け持つことになる。コンタクト抵抗が増加することによる信号電圧への影響は、2倍に増える。

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セルの幅とコンタクトの関係。セルの幅が最小単位(左端のレイアウト)のときは、1個のコンタクトが1個のトランジスタ電流を引き受ける。しかしセルの幅を広く確保すると、1個のコンタクトは2個のトランジスタによる電流を受け持つようになる(クリックで拡大) 出典:ARM

しきい電圧と電源電圧、温度が遅延時間に与える影響

 トランジスタのしきい電圧(VTH)と温度が遅延時間に与える影響と、電源電圧(VDD)と温度が遅延時間に与える影響は、かなり複雑な様相を呈する。第1世代のFinFETの事例を、ARMはスライドで見せていた。

 電源電圧(VDD)を一定にしてしきい電圧(VTH)を変えると、遅延時間の温度依存性が大きく変化する。あるしきい電圧だと、低温では遅延時間が長く、高温では遅延時間が短くなる。ところが別のしきい電圧だと、低温では遅延時間が短く、高温では遅延時間が長くなる。しきい電圧の違いにより、逆の温度特性を示すようになる。

 しきい電圧(VTH)を一定にして電源電圧(VDD)を変えると、この場合も遅延時間の温度依存性が大きく変化する。温度上昇によって遅延時間が短くなるVDDと、逆に温度上昇によって遅延時間が長くなるVDDがある。4通りのVDDで温度特性を調べると、遅延時間が最大になる温度は−40℃、+25℃、+65℃、+125℃と4通りになる。

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プロセス(しきい電圧)(P)、電源電圧(V)、温度(T)によって遅延時間が変化する(PVTコーナー)。第1世代のFinFETの例。遅延時間は25℃の値を100%とする相対値(クリックで拡大) 出典:ARM

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