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IBM、実用的な量子コンピュータに近づく成果:新技術(3/3 ページ)
IBMは、量子ビット数を拡張できる量子コンピューティング アーキテクチャを開発したという。量子コンピュータ実現に向けた大きな課題であるビット反転エラー/フェーズ反転エラーを補正できる冗長性を持たせたアーキテクチャで、規模を拡大させやすいとする。
解読不能な暗号コード作成も可能に
量子コンピュータが実現すれば、あらゆる種類の既存の暗号化コードを解読できるようになる他、解読不可能なコードを新たに作成することも可能になる。さらに研究者たちにとっては、既存のコンピュータではシミュレーションすることができないような物理的プロセスも実行可能になるだろう。あらゆる分子間相互作用によって、共通プロセスを機能させられるようになるため、現在では想像もできないような材料を作成したり、体系化されていないビッグデータから一瞬のうちに必要な情報を取り出したり、現在では試行錯誤によって発見するしかない有益な化学反応を確実に把握できるようになることなどが想定される。
IBMの量子コンピューティング アーキテクチャは、スケーラブルなビルディングブロックを使用して、量子ビットの誤りを訂正し、従来のコンピュータができない問題を解決できるようになるとする (クリックで拡大) 出典:IBM
Chow氏は、「量子コンピュータによって、あらゆる業界がイノベーションの新時代を迎えることになるだろう」と結論付けた。
IBMの今回の研究は一部、米国防総省の情報先端研究プロジェクト活動(IARPA:Intelligence Advanced Research Projects Activity)の「MQCO(Multi-Quibit-Coherent-Operation)プログラム」による資金提供を受けているという。
【翻訳:青山麻由子/田中留美、編集:EE Times Japan】
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