無線給電が一役買った、アイガモを救う“水田除草ロボット”:WTP2015 / ワイヤレスジャパン2015
ビー・アンド・プラスは「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2015」(WTP2015/2015年5月27〜29日)で、自社のワイヤレス給電技術のユニークな採用事例として、水田除草小型ロボットを紹介した。
ワイヤレス給電が、水田を除草するアイガモを救った!?
ワイヤレス給電機器メーカーのビー・アンド・プラスは2015年5月27〜29日に開催されている「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2015」(WTP2015/東京ビッグサイト)で、自社のワイヤレス給電技術のユニークな採用事例として、水田除草小型ロボットを紹介した。
アイガモが除草してくれる
水田は、田植えから1カ月程度すると雑草が生え、除草を行う必要がある。しかし、除草は重労働であり、農薬を散布して除草する場合が多い。ただ、農薬を使わない有機農法では除草剤が使えない。
そこで、人の手を介さず除草する方法として利用されているのが、アイガモだ。
アイガモを水田に放しておくと、アイガモは自由に水田を動き回る。その動きで、生え始めでしっかりと根付いていない雑草が土から抜ける。水面に浮いた雑草は、日光の紫外線に当たることで枯れ、結果、除草できるという仕組みだ。
1年限りのアイガモ、そして費用
ただ、アイガモによる除草は、問題も多く抱える。1つは、アイガモを水田に定着させること。そのため、電気柵で水田を囲うなり、アイガモを教育するなりの手間が掛かる。もう1つは、1歳程度までのアイガモしか水田に放すことができないということだ。アイガモは成長すると稲を食べてしまうため、毎年、新たな幼いアイガモを手に入れる必要がある。そのため、大規模な水田では、毎年アイガモによる除草で100万円程度のコストが掛かるという。
そこで、アイガモの代わりにロボットを水田を走らせようと、数年前から会津大学と会津地区の企業などで構成する研究チーム「アイガモヅ(会・鴨・津)」が、水田除草ロボットを開発に着手。アイガモの動きをまねて水田を自走するロボットを開発し、実証実験を繰り返していた。
ただ、実証実験で問題になったのが、ロボットのバッテリーの交換だった。防水対策面からロボットに充電用コネクタを搭載できない。そのため、充電のたびにロボットからバッテリーを抜き、充電して戻さなければならなかった。この作業は、農家にとっては、手間の掛かる作業で、水田除草ロボットの実用性を悪くしていた原因だった。
無線給電+防水
そこで、同研究チームでは、主に産業用途で防水、防じんを施したワイヤレス給電機器で実績を多く持つビー・アンド・プラスの電磁誘導式ワイヤレス給電技術に目を付け、水田除草ロボットに搭載。バッテリーを出し入れすることなく、非接触での充電を可能にした。
30W対応の電磁誘導式ワイヤレス給電システムを使い、約1時間で、ロボットの内蔵電池(7.4V 2600mA/hのリチウムポリマー電池)の50%程度まで充電でき、「1時間充電、3時間動作というサイクルで使用できる」とする。
また、電源がない水田ということで、小型太陽発電パネルと蓄電池を組み合わせた電源も使用し、手軽に水田除草ロボットを使える環境を整え、2014年に2a(400m2)の水田で、ワイヤレス給電式水田除草ロボットを約5台運用した本格的な実証実験を実施。ほぼ農薬を散布した水田と同様の除草効果を発揮し、ことし2015年はより大規模な水田での実証実験に挑んでいるという。
防水求める他の用途へ
ビー・アンド・プラスの担当者は「除草効果が実証され、何より。1年限りでお役御免になるアイガモは、食用にされることも多いと聞いている。ロボットが代わりを果たすことで、そうした悲劇もなくなる」と笑う。
そして、「ワイヤレス給電技術の新しい応用事例。他にも水質調査用のロボットに採用したいなどの引き合いもあり、当社の防水、防じん技術とワイヤレス給電技術を応用しさまざまな用途を開拓したい」とする。
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