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EtherCAT通信の仕組みを知ろう〜メイドは超一流のスナイパー!?江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(2)(2/8 ページ)

今回は、EtherCATの仕組みを信号レベルでご説明します。「ご主人様(EtherCATマスタ)」と「メイド(EtherCATスレーブ)たち」が、何をどのようにやり取りをしているのかを見てみると、「メイドたち」が某有名マンガのスナイパーも腰を抜かすほどの“射撃技術”を持っていることが分かります。後半では、SOEM(Simple Open EtherCAT Master)を使ったEtherCATマスタの作り方と、簡単なEtherCATの動作チェックの方法を紹介しましょう。

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無限数のDIOが手に入る

 EtherCATも同じスレッドで語ることができます。

 「オープン」については、イーサネット(Ethernet)ケーブルという、誰にでも簡単に手に入るケーブルとパソコンを使って、100マイクロ秒単位でロボットや製造ラインを制御することができます。

 「セキュリティ」については、もし、その制御システムをコントロールするパソコンが、インターネットなどと接続可能な状態であれば、そのパソコンを乗っ取られ、最終的には、(工場、生産ライン、軍事基地等の)制御システムを丸ごと乗っ取られます*)

*)『制御用のパソコンをインターネットに接続するマヌケがいるか?』という方には、この記事の「スタックスネット」をご一読ください。

 ―― とまあ、いろいろ書きましたが、正直なところIoTやEtherCATの、一般向けのお話は、私にはどーでも良いことなのです。

 これまで、いろいろな制御システム向けのネットワーク(これを「制御LAN」といいます)に関わってきたこの私が、今回、EtherCATに狙いを定めた理由は、簡単です。

 「イーサネットケーブルにつなぐだけで、事実上、無限数のDIO(Digital Input/Output)ポートが、手に入る」 ―― この一言に尽きます。

 “DIO”とは、5V電圧と0V電圧を、それぞれON信号、OFF信号として、入出力をする信号ポートのことです。DIOポートさえあれば、(理屈の上では)どんな機械でも制御可能です。

 学生の頃、私は「ロボットの歩行計画」の研究をやっていたのですが、当時の研究室のパソコン(PC-9801とかPC-286)に、たかだか8個のDIOポートを設けるために、

  • 自腹を切って、I/O変換ポート用の部品を購入し、
  • 拙い技量でI/O変換回路のハンダづけを試み(そして、やけどをし)、
  • 友人に頭を下げて、マシン語でDIOポートのデバイスドライバを作ってもらい、
  • 徹夜を繰り返しながら、制御プログラムのコーディングとデバッグを続ける

そういう日々を送っていました。

 DIOポートが動き出す頃には、精根尽き果て、本来の研究(歩行ロボットの歩行計画)の気力をすっかり喪失してしまっているという、本末転倒な事態になっていました。

 しかし、EtherCATなら、パソコンの筐体を開くことなく、イーサネットの口だけあれば、ほとんど無限数といっていいDIOポートが、驚くほど簡単に、安価に手に入るのです。

 ―― もしタイムマシンがあったら、このEtherCATスレーブを、30年前の大学の研究室に放り込んでくるのに!

と、悔しい思いをしています。

 まあ、過去のことはどうでも良いです。

 今の私には、大量のDIOをわが家の至る所に準備する、切実な理由があります。これについては、次回お話させてください(EtherCATと直接関係のない話を、これ以上続けると、さすがに怒られそうですので)。

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