EtherCAT通信の仕組みを知ろう〜メイドは超一流のスナイパー!?:江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(2)(3/8 ページ)
今回は、EtherCATの仕組みを信号レベルでご説明します。「ご主人様(EtherCATマスタ)」と「メイド(EtherCATスレーブ)たち」が、何をどのようにやり取りをしているのかを見てみると、「メイドたち」が某有名マンガのスナイパーも腰を抜かすほどの“射撃技術”を持っていることが分かります。後半では、SOEM(Simple Open EtherCAT Master)を使ったEtherCATマスタの作り方と、簡単なEtherCATの動作チェックの方法を紹介しましょう。
「メイド」は射撃の名手!?
前回は、「ご主人様」と「メイドたち」に登場してもらって、かなり大ざっぱなEtherCATの説明を試みましたが、今回は、実際のモノで、物理レベル(信号レベル)の説明を試みます。
さて、このご主人様であるEtherCATマスタと、メイドであるEtherCATスレーブは、イーサネットケーブルで、「両手をつないで」ネットワークを作ります(デイジーチェーンといいます)。
マスタは、そのネットワークに対して、イーサネットフレームという0と1が連続するビットのかたまり(最大1万2000ビット)を送信します。このイーサネットフレームには、ネットワークにつながっている、全てのスレーブへの指示が記載されています。このイーサネットフレームは、全てのスレーブを巡回して、再度マスタに戻ってきます。
「あれ? でもこの接続(デイジーチェーン)だと、ループにならないよ」とも思われるかもしれませんが、今、パソコンで使われているイーサネットケーブルは、1本のイーサネットケーブルに2本の通信路があり、「行き」と「帰り」の道が別々に存在しているので問題はありません。
上の図は、スレーブが3つ(スレーブA、B、C)があった時の、イーサネットフレームの中身のザックリした概略図です。要は、EtherCATのマスタとスレーブは、ネットワーク上で動き続けている1つのイーサネットフレームに、必要なデータを読み書きして、お互いに交換しているだけです。
上記の図は、流れている最中のイーサネットフレームから、スレーブがデータを取り出したり、書き込んだりしている様子を示す図です。
イメージとしては、
『駅を通過している最中の新幹線に、ホームから、指定された車両の座席に向けて、正確にピンポイントの狙撃をする』
または、
『駅を通過している最中の新幹線の座席から、ホームに向けて、正確にピンポイントの狙撃をする』
という感じでしょうか。しかも、連続射撃です(数十発から数百発の連射)。
「ゴルゴ13」でも難しいだろうと思われる、高速移動中のピンポイント連続狙撃を、メイド(スレーブ)たちはやすやすとやっているわけです。
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