真似されない技術はどう磨く? 〜モノづくりのための組織能力とは:勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(5)(2/4 ページ)
たとえ技術の中身が全て開示されても、“同じモノ”が作られることはない――。これが真に“模倣されない”技術である。では、そのような技術はどうやって手に入れればいいのか。トヨタ生産方式(TPS)の秘話を交えながら、考えていこう。
他社は絶対真似できない? TPS
ちょっとここで、筆者自身の話をしたい。トヨタ自動車の「TOYOTA WAY 2001(トヨタ自動車75年史、人材育成)」が登場して間もないころ、筆者は開発エンジニアから経営企画の仕事に変わったばかりだった。当時、よく付き合いのあったトヨタ自動車のR&D部門、開発設計部門、人事部門の人たちと盛んに「エンジニアの育成」や「企業風土」について熱く語り合っていた。
当然、「TOYOTA WAY 2001」の話題も挙がったのだが、TPSについて次のような秘話を語ってくれた。
『われわれは、TPSはもちろん、現場の自発的な小集団活動を50年続けている*)。昨今、TPSをウリとするコンサルティング会社の乱立が目立ち、さらに、TPSは効果がないと記事にするビジネス誌も少なくない。そんなものはわれわれから言わせれば当然のことである。われわれですら50年かかったものを、そんじょそこらのコンサル会社や他社が真似てできるはずがない』。
*)1950年代、トヨタ自動車は「トヨペット クラウン」などを発売したものの、業績の悪化や自動車の品質保証といった問題に苦しんだ。2001年は、そうした時代から50年目の節目に当たっていた。
これが実際の「TOYOTA WAY 2001」にどこまで書かれているかは不明だが、こうまで言い切ったのは、『真似できるものなら、真似してみろ!』という気持ちの表れのようで、今でも強く印象に残っている。
そう、「真似したくとも、真似できない」こととは、図2の一番下、“容易に真似できない領域”に他ならないのである。
では、「なぜ、真似ができないのか?」。教科書的な答えを書けば、「固有技術を真似てもうまくいかない」ということになるだろうが、「真似できない領域が存在するから」と考えた方がより素直だ。そして、これこそがまさに「組織能力」なのである。
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