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真似されない技術はどう磨く? 〜モノづくりのための組織能力とは勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(5)(1/4 ページ)

たとえ技術の中身が全て開示されても、“同じモノ”が作られることはない――。これが真に“模倣されない”技術である。では、そのような技術はどうやって手に入れればいいのか。トヨタ生産方式(TPS)の秘話を交えながら、考えていこう。

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「勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ」バックナンバーはこちらから

 今回、皆さんにお話することは、“モノづくりの組織能力”についてである。第4回において、「モノづくり戦略論・産業論」(東京大学教授/東京大学ものづくり研究センター長 藤本隆宏氏)として紹介したものだ(第4回 図3参照)。なお、“製品アーキテクチャ”については、次回以降で述べる。

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図1 組織能力とは(第4回 図3より抜粋)

 第4回の図3および図1中では、モノづくりの組織能力の説明として、「企業固有の設計情報の流し方のうまさ、長年にわたり蓄積されたもの、組織学習」と記している。

 最初の「設計情報の流し方のうまさ」については、次回に説明を譲り、今回は「長年にわたり蓄積されたもの、組織学習」について考えてみたい。

容易に真似(まね)できない領域

 図2に、「モノづくり企業の実力・企業価値」の概念図を示す。

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図2 モノづくり企業の実力・企業価値(第1回 図1より)(クリックで拡大)

 繰り返しとなるが、その説明としては以下の通りである。

強い企業というものは、われわれからは直接見えない、生産性を高めるための工夫や改善をたゆまぬ努力で継続しているのであり、いわば「裏の競争力」を持っているのだ。

すなわち、この「裏の競争力」があるからこそ、「表の競争力」である製品を生み出せるのであって、それこそ、「企業の収益が悪化した」「製品が売れない」からといって、現場が弱くなったわけではないのである。

さらに、この「裏の競争力」を源泉として「モノづくりの組織能力」が企業組織に染み付き、企業文化として根付いているので、“容易に真似(まね)できない領域”を持っていることは間違いない。


 今回、掘り下げて考えたいことが、ここでいう「モノづくりの組織能力」であり、“容易に真似できない領域”である。

 図2中では、例として、5S、標準化、TPS(Toyota Production System:トヨタ生産方式)、JIT(Just in Time)、フロントローディングなどが挙げられている。主に、自動車業界(特にトヨタ自動車)を中心に広く製造業の生産現場では知られている。フロントローディングも「工程で品質を作り込む」というトヨタ生産方式に端を発し、いわゆる上流工程である主に開発・設計の初期段階に負荷をかけ、量産開始前に不良など品質に関する原因を出し切ってしまおうという考えである。これらは、主にエレクトロニクスを生業とする読者諸氏も一度は耳にしたことがあるだろう。

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