CypressによるISSIの買収、二転三転するも白紙に?:企業動向(2/2 ページ)
Cypress Semiconductorが「次の買収先」として狙いを定めていたISSI(Integrated Silicon Solution)は、Cypressの提案を断り、Uphill Investmentとの取引を行うようだ。CypressとISSIの買収案は二転三転していたが、白紙となる可能性が濃厚である。
シェア独占の懸念があった
独占禁止法問題の専門家の1人は、「ISSIとCypressの取引が実現すれば、ドイツのSRAM市場でシェア70%以上を持つ企業になっていた。ドイツの車載向けSRAMにおいては、たった1社のサプライヤとなる可能性があった」と懸念を示していた。
Cypressは2015年4月に、エラー訂正コード(ECC)を内蔵した4Mビット非同期SRAMを発表している。同社はSRAM市場自体は縮小傾向にあると認めているものの、車載やIoT(モノのインターネット)といった市場ではSRAMへのニーズが高まると見ている。
Objective Analysisの主任アナリストであるJim Handy氏は、IoT市場がSRAMの成長要因になるという見方について、完全には同意していない。低消費電力SRAMは、DRAMにシェアを奪われている。それだけでなく、SRAM市場はさまざまな分野において、より安価なメモリに浸食され始めているという。
SRAM技術は進化している
とはいえ、SRAM市場では、まだ技術革新が進んでいる。Intelは2015年2月に開催された「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)2015」(米国サンフランシスコ)において、14nmプロセスを適用したSRAMを発表した。1mm2当たり14.5Mビットのデータ保存が可能な、0.0500μm2SRAMビットセルだ。Intelが今後開発する、セルラーモデム向けのSoC(System on Chip)に採用される予定だという。
ISSIは1988年に設立され、米国カリフォルニア州ミルピタスを拠点に、中国、欧州、香港、インド、日本、韓国、シンガポール、台湾にオフィスを展開し、1995年には株式公開を果たしている。自動車、通信、デジタル機器、産業、医療市場向けに、高速で低消費電力のSRAMや、記憶密度が低〜中程度のDRAM、NOR型フラッシュメモリを開発している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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