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イリジウム酸化物の性質を解明、低消費電力デバイス応用に道筋先端技術(1/2 ページ)

理化学研究所(理研)松野丈夫専任研究員らによる国際共同研究グループは、原子レベルの超格子薄膜技術を用いて、イリジウム酸化物の電子相を制御し、磁性の出現と絶縁体化が密接に関係していることを解明した。

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 理化学研究所(理研)石橋極微デバイス工学研究室の松野丈夫専任研究員らによる国際共同研究グループは2015年6月、原子レベルの超格子薄膜技術を用いて、イリジウム酸化物の電子相を制御し、磁性の出現と絶縁体化が密接に関係していることを解明することができたと発表した。今回の成果は、イリジウム酸化物が低消費電力デバイスを実現する材料として有用であることを実証した。

 今回の研究は、松野氏の他、東京大学 理学系研究科教授の高木英典氏、東京大学 物性研究所准教授の和達大樹氏、日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究センター研究主幹の石井賢司氏及びトロント大学 物理学科教授のHae-Young Kee氏らによる国際共同研究グループが行った。

表面だけが金属の性質を持つトポロジカル絶縁体

 低消費電力デバイスを実現するための材料として、物質内部は絶縁体で物質表面だけが金属であるという性質を持つトポロジカル絶縁体が注目されている。その1つがイリジウム酸化物である。電子のスピンと軌道運動の磁気的相互作用である「スピン‐軌道相互作用」と、電子同士の相互作用である「電子相関」を併せ持つ物質である。この2つの相互作用の共存は、これまで発見されていない「電子相関の効いたトポロジカル絶縁体」につながる可能性があるとみられている。しかし、イリジウム酸化物は結晶構造の種類が少なく、性質の解明までには至らなかった。

 今回の研究では、原子レベルで薄膜を積層できるパルスレーザー堆積法を用い、ペロブスカイト構造を持つイリジウム酸化物(SrIrO3)の薄膜と、チタン酸化物(SrTiO3)の薄膜を交互に積み重ねた超格子構造を作製した。チタン酸化物薄膜に挟まれたイリジウム酸化物薄膜の枚数を制御することで、これまで困難だった0.4nmレベルという原子2個程度に相当する微細寸法の結晶構造を制御することに成功した。これによって、イリジウム酸化物の電子相を精密に制御することが可能になり、磁性を持った絶縁体相から半金属へと電子相が変化していく様子を連続的に捉えることができた。


作成した超格子の模式図(上部)と走査透過電子顕微鏡のよる像(インジウムとチタンが交互に積層している) (クリックで拡大) 出典:理化学研究所

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