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「老人ホーム 4.0」がやって来る江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(3)(1/5 ページ)

私がEtherCATでホームセキュリティシステムを構築しなければならない切実な理由――それは「介護」です。自分の身を自分で介護する。そんな次世代の介護システム実現のために、EtherCATを利用できると考えたのです。後半では、PCベースでEtherCATスレーブを作る方法をご紹介します。

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 FA(ファクトリオートメーション)を支える「EtherCAT」。この超高度なネットワークを、無謀にも個人の“ホームセキュリティシステム”向けに応用するプロジェクトに挑みます……!!⇒「江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る連載一覧


―― 掃除機、洗濯機、炊飯器……。

戦後、これらの機器によって家事は一貫してより楽に、より手を抜いて済ませる方向を目指して歩んで来たと言えよう。

しかし、家庭内にはそれら文明の光が充分に届いていない分野が残されていた。

21世紀の現在においても、省力化が行き届いていない未開の分野が存在するのである。

それが育児分野である。

育児界における進歩は、たかだか紙おむつや粉ミルク程度に留まっており、その進歩は全自動洗濯機や自動食器洗い乾燥機が達成したレベルと比較して著しく低いと言わざるを得ない。

かかる現状を鑑(かんが)みたとき、電機メーカーが開発を急ぐべき商品はもはや言うまでもないだろう。

「全自動育児機」

である。

それは未開拓の沃野(よくや)。
先の見えない景気の低迷とヒット商品の不在に悩むメーカーに差す、一条の光。
一気に世界のシェアを独占できるまたとないチャンス。
育児界のパラダイムシフト。
人類にとっての新たなステージの幕開け。
シーモンキーの飼育並みのお手軽さ。
たった1つの「育児これっきりボタン」ですくすく育ちます。

後世、人々は言うだろう。
人類の偉大な発明は、火、ネジ、車輪そして全自動育児機だと。

とはいえ、この商品にも欠点がないわけではない。

少子化という現在のトレンドである。
少子化が加速している現在、この商品の将来性にやや難があるのは事実だろう。

だが心配は無用である。

全自動育児機の開発技術は、もう1つの優れた商品の開発にも応用できるからである。

その商品とは

「全自動寝たきり老人介護機」

である。

現在、先進国と言われる国々では、どこも国民の高齢化が悩みの種である。育児分野が先細りなのに対し、老人分野は今後の成長が大いに期待できよう。介護に要する精神的肉体的負荷を大幅に軽減できるこの商品は、喝采をもって世に容れられるであろう。

まさに「ゆりかごから墓場まで」

これからの電機メーカーの進むべき、新たな指標がここにある。

世間の非難は浴びるにしても。

(本文著作者と江端は師弟関係にて無許諾転載)



 冒頭から過激な文章を掲載しましたが、これは、十数年前、育児で疲れ果てていた私たち夫婦に、私のコラムの師匠である先輩が贈ってくれた一通のメールです(師匠、あの時は、ありがとうございました。夫婦で爆笑させていただきました)。

 さて、当時の私たち夫婦にとって、「全自動寝たきり老人介護機」の方はともかくとして、「全自動育児機」は、心底欲しいと思いました。

 「全自動育児機」とまでは言わないまでも、『世の中の全ての育児に関わる保護者に、毎日、連続4時間の睡眠を与えることさえできれば、育児ノイローゼによる悲劇的な事件は劇的に減る』と思っていましたし、今でもそう信じています。

 そして十数年を経て、子どもたちの手が離れるようになってきた今、私たち夫婦は、「全自動寝たきり老人介護機」の話を、単なるシャレや冗談として話すことができない段階に突入しているのです。

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