SSD標準規格、4年ぶりに更新へ:用途の広がりを受けJEDECが発表
JEDECが、SSDの標準規格を約4年ぶりに更新するという。SSDの用途が確実に広がっているという状況を受けての更新とみられる。
米国の電子部品関連標準化団体「JEDEC Solid State Technology Association」が、4年ぶりにSSD標準規格を更新する予定だという。次世代規格は、近年のSSD関連の技術発展に伴い、さまざまな要因による影響を受けるとみられている。
「JESD218(Solid State Drive Requirements and Endurance Test Method)」はもともと、2010年9月に発表された規格である。最後に更新されたのは2011年2月だ。JEDECは発表した資料の中で、「データセンターにおいてフラッシュメモリが普及していることもあり、ベンダー各社は、さまざまな用途に対応できるよう、販売するSSDの多様化に取り組んでいる」と指摘している。
JEDECはプレスリリースの中で、「以前から、JESD218を最新版に更新するための取り組みを進めてきた。主に試験方法を改善することによって、製品に期待される性能がより良く反映されるようにする他、使われていない手法を廃止して、試験に関する選択肢を削減していく」と述べている。
さらに、「JESD218は、SSDのデータ保持について誤った認識が広がったことを受けて大きな注目を集めている。このためSSDに関して、現実的な耐久性/信頼性を備える有意義な基準規格を定義する必要性が浮き彫りになった」と説明した。
2015年5月に、「新型のSSDは、高温の室内に放置された場合、わずか数日間でデータを失う可能性がある」とする重大な懸念が生じた。あるブログの中で、JEDECが5年前に発表した規格の内容が誤って解釈され、誤解が生まれたためだ。
SSDでは耐久性が重要視される
メモリ関連の規格を更新する場合には、「性能を2倍に向上させること」「消費電力量を半分に低減すること」などが目標として掲げられる場合が多い。しかし、SSDの規格の場合、特に重要視されるのは耐久性の向上だ。Micron Technologyは2015年初めに、eMLC(enterprise MLC)の代替品として、エンタープライズ向けストレージシステム「FortisFlash」を発表しているが、この製品は、耐久性の向上と引き換えに性能を犠牲にしている。
同社は2014年、モバイルコンピューティング市場向けにクライアントSSDを発表した。同社の最新の16nmプロセスを適用した製品で、MLC(Multi Level Cell)のNAND型フラッシュメモリを、SLC(Single Level Cell)のように動作させる機能を搭載していることも特徴である。
TLC(Triple Level Cell)のNANDフラッシュも広く普及し始めている。現在のところ、主にUSBメモリやフラッシュメモリカード、低価格スマートフォン、クライアントSSDなどで使われているが、今後2年間でMLCが普及するに伴い、データセンター市場にも浸透していくとみられている。米国の市場調査会社であるGartnerの予測によると、主要なデータセンター顧客によってTLCの導入が進んでいく一方で、NANDフラッシュ技術は今後1年の間に、3Dを中心として進展していく見込みだという。
「NVM Express」も重要
もう1つ、SSDの次世代規格に影響を与えるものとして「NVM(Non-Volatile Memory) Express(NVMe)」がある。SSD向けに開発された通信インタフェースで、サーバやワークステーション向けSSDで採用が進んでいる。同規格の策定団体であるNVM Express Organizationは、2014年11月に最新仕様としてNVMe 1.2を発表した。
JEDECは2015年5月、DRAMとNAND型フラッシュメモリのハイブリッドDDR4(NVDIMM)を正式に規格化したとは発表した。この新しい規格により、ハイブリッドDDR4メモリモジュールがDIMMソケットに差し込まれても、システムコントローラからは通常のDDR4 SDRAMとして認識されるようになる。
JESD218は、クライアントSSDとエンタープライズSSDのそれぞれについて、使用条件と耐久性基準を定めている。また、書き込み回数をベースにしたSSDの耐久性ランクについての記述も含まれている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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