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低温・溶液プロセスで高効率、高信頼性の新型太陽電池の作製に成功:注目集める“太陽電池ペロブスカイト”(1/2 ページ)
次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池を低温・溶液プロセスを用いながら、従来よりも高い変換効率、信頼性を実現したと物質・材料研究機構が発表した。
物質・材料研究機構(NIMS)のナノ材料科学環境拠点 ペロブスカイト太陽電池特別推進チームは2015年6月、新型太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」を低温、溶液プロセスを用いて作成することに成功したと発表した。低温・溶液プロセスの実現により、プラスチックなどの軽量でフレキシブルな基板を用いた太陽電池の製造が可能になるという。
安価で高効率な新型太陽電池
ペロブスカイト太陽電池は、灰チタン石(ペロブスカイト)と同じ結晶構造を持つ半導体材料で作成する新しい太陽電池。ヨウ化鉛メチルアンモニウム(CH3NH3PbI3または製法によりCH3NH3PbI3-xClx)がペロブスカイト層として用いられるハロゲン化鉛系ペロブスカイト太陽電池の研究が進められている。
このペロブスカイト太陽電池は、
- 比較的安価な方法で作製できること
- 500nmの厚みでほぼ100%の光を吸収できること
- 1V程度とシリコンを用いるなどした他の太陽電池と比べて特に高い開放電圧が得られること
などから、安価で高効率な次世代太陽電池として注目が集まっている。
耐久性などに課題
ただ、実用化に向けて多くの課題も抱える。
- 高い光電変換効率が得られるものの、データのばらつきが大きく再現性が低い状態であること
- 電圧掃引方向によって得られる光電変換効率が異なる現象(ヒステリシス)が観測されるなどし、変換効率が高いということの信ぴょう性も疑問視されていること
- 数回の測定で素子が劣化するなど耐久性に問題があることも多く、ペロブスカイト材料自体の半導体としての電気特性を正確に評価できていないこと
などが課題として存在する。
塩素などを添加する新プロセス
こうした中で、NIMSではこのほど、相互拡散法(Interdiffusion method)と呼ばれるペロブスカイト太陽電池の作製プロセスに塩素を含む材料を添加する新規作製法を開発した。同作製法により、「優れた光電変換効率と下記の特徴を有するペロブスカイト太陽電池を低温・溶液プロセスにて実現することに成功した」(NIMS)という。
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