太陽電池、これまで10年これから10年(前編):『EE Times Japan 10周年』特別編集(4/6 ページ)
EE Times Japan創刊10周年を記念し、主要技術の変遷と将来を紹介する。太陽電池は燃料を必要としない未来の技術としてもてはやされてきた。しかし、国の産業政策は必ずしも成功してはいない。では技術開発の進展はどうだったのか。これまでの10年とこれからの10年を紹介する。
目標は達成できるのか
PV2030の目標は達成できるのだろうか。2020年まであと5年を残しているものの、現時点で分かることがある。
まずは状況の変化だ。2011年に固定価格買取制度が国内でも開始*6)。太陽電池の導入量が急増した。例えば2014年は9.7GWを新規に導入し、累積導入量が23GWを超えた(図9)*7)。
住宅用の平均システム価格も下がり続けている。2009年度は1kW当たり60万7000円。これが2014年度には38万5000円まで下がった*8)。
*6) FIT導入以前はRPS(Renewables Portfolio Standard)制度を採っていた。再生可能エネルギーの利用量を電気事業者に義務付ける制度である。
*7) REN21(Renewable Energy Policy Network for the 21st Century)が公表したRenewables 2015 Global Status Reportによる。
*8) 太陽光発電普及拡大センター(J-PEC)が公開してきた「住宅用太陽光発電補助金交付決定件数・設置容量データ」による。補助金の交付を受けた住宅の平均値。平均導入量は2014年度で4.56kW。
この傾向は今後も続きそうだ。太陽光発電協会(JPEA)が2015年4月に公開した「JPEA PV OUTLOOK 2030」によれば、2020年の国内累積導入見通しを65.7GW、2030年は100GWとしている。習熟曲線と、固定価格買取制度の買取価格引き下げによって、平均システム価格はさらに下がるだろう。
ゼロエネルギーハウスも実現
導入コストが順調に下がってきたため、2005年当時には夢物語だった「ゼロエネルギーハウス(ZEH)」が国の政策に取り入れられた*9)。住宅の発電量(kWh)と電力の購入量(kWh)が年間を通じて釣り合うため、化石燃料をなるべく使わないという太陽電池本来の目的に沿った政策だ。
積水化学工業が2015年2月に発表した調査結果によれば、同社の太陽光発電システムを導入した戸建住宅3545戸(導入量の中央値は4.8kW)のうち、政府の定義に従うと66%でゼロエネルギーを実現できた。消費電力量がマイナスになるという意味でも17%がゼロエネルギーハウスとなったという。
*9) 「ネットゼロエネルギーハウス(ZEH)」とは、年間の1次エネルギー消費量がネットでおおむねゼロとなる建築物・住宅をいう。経済産業省や環境省、国土交通省が共通に掲げる目標。新築住宅の平均で2030年までに標準的な新築住宅が満たすべき指針とした。
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