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超伝導量子ビットと直径1mm磁石のコヒーレントな結合に成功:量子インタフェースや量子中継器への応用に期待(2/2 ページ)
東京大学先端科学技術研究センターの中村泰信教授らによる研究グループは、ミリメートルサイズの磁石が量子光学的に振る舞うことを確認した。さらに、磁化揺らぎ量子状態を自在に制御する方法を見出した。研究成果は、量子コンピュータと量子通信ネットワークの間で、量子情報を受け渡す量子インタフェースや、それを用いた量子中継器への応用が期待されている。
エネルギー準位の分裂として観測
続いて研究グループは、マイクロ波空洞共振器の中に、YIG球と超伝導量子ビットを配置して実験した。この実験では、空洞共振中のマイクロ波光子の仮想励起状態を介した、超伝導量子ビットとYIG球上のマグノン間のエネルギー量子のコヒーレントな相互作用の証拠を、真空ラビ分裂と呼ぶエネルギー準位の分裂として観測することができた。
さらに研究グループでは、マグノンと光通信波長帯光子との相互作用についての研究にも取り組んでいる。マグノンと光子の間のリンクを実現することで、マグノンを介したマイクロ波と光の間の量子インタフェースを術減していく方針である。
今回の研究成果は、量子コンピュータと量子通信ネットワークの間で、量子情報を受け渡す量子インタフェースや、それを用いた量子中継器への応用が期待されている。なお、成果については2015年7月9日(米国時間)発行の米国科学誌「サイエンス」オンライン版に掲載された。
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