「ダイエットで美しくなれる」は、本当か?:世界を「数字」で回してみよう(17) ダイエット(9/9 ページ)
今回は、ダイエットの価値を、「美しさ」という観点から考えます。「ダイエットをすれば美しくなれる」というのは、“常識”になっている感があります。では、それを数字で検証してみましょう。国民的アイドルの身長や体重(推定値)の値をちょっと拝借することにします。そう、あの国民的アイドルですよ、皆さん。
「AKBファン」疑惑
後輩:「全く不愉快ですね。不愉快極まりないですね」
江端:「どこ?」
後輩:「何が『ひと通り合理的に説明できる1つの仮説を持っています』ですか。市井(しせい)の研究員風情が、フェルマー気取りですか? えらっそーに」
フェルマーとは、17世紀フランスの数学者ピエール・ド・フェルマーのことで、彼の考案したある定理は、その後360年間、世界中の数学者を悩まし続けましたが、ごく最近になってようやく証明されるに至りました(「フェルマーの最終定理」といわれています)。
ただ、このフェルマーという数学者、なんともいけすかないヤツでして、『この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる』という言葉をノートの片隅に残し、この定理の証明を残さないまま、この世を去りました(今では、『フェルマー自身も証明できなかったのだろう』という説が有力です)。
江端:「いや、私は、このままこの世を去るつもりはないぞ。来月には、ちゃんと解説する予定だし。それに、私のコラムを『うんざりするほど長い』だの、『ネチっこい長文』だのと、ボロくそにこきおろしてきたのは、お前だろうが」
後輩:「なんかねー、江端さんが偉そうにしているように見えるだけで、無性に不愉快な気分になるんですよ。分かります?」
江端:「知るか!」
後輩:「それと、後半、一生懸命『美しさの定義』を試みている努力は理解できますけど、ありゃダメですね」
江端:「え? ダメ?」
後輩:「もちろん、論理をクローズさせることはできているようには見えますよ。でも、あの理論、循環論法に陥っていませんか?」
江端:(ギクッ!)
後輩:「江端さん。私達研究員は、『ロジック』で飯食っているんですよ」
江端:「はい。その通りです……」
後輩:「それと、『カルトなAKBファン』という言い方も、AKBファン……じゃなくて、全ての読者を小馬鹿にしているような表現で、実に不快ですね! 全く不愉快ですね!! 断固として容認できませんね!!!」
江端:「……ん? あれ、もしかして、お前」
後輩:「とにかく!」
江端:「……はい」
後輩:「江端さんは、読者をもっと大切にしなければなりません。どのような世代にあって、どのような嗜好を持っている人間であっても、一片たりとも偏見を持つことなく、一切の隔りなく、常に謙虚に読者の批判を受けいれ、日々精進を続け、万人に愛される優れた技術コラムを目指してですね……、江端さん! ちゃんと聞いていますか!?」
江端:「……はい。ちゃんと聞いています」
アンケートご協力のお願い
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(謝辞)
今回のテキスト分析では、NTTデータ 数理システム様よりお借りしているテキストマイニングツール「Text Mining Studio」を使わせて頂きました。
この場を借りて、御礼申し上げます。
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Profile
江端智一(えばた ともいち)
日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。
意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。
私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。
本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。
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