次々世代のトランジスタを狙う非シリコン材料(2)〜ゲルマニウムの復活:福田昭のデバイス通信(34)(1/2 ページ)
前回は、シリコン(Si)を代替する半導体材料の候補を紹介した。今回はゲルマニウム(Ge)をチャンネル材料とするMOSFETの研究開発の歴史と現状を紹介する。歴史上、初めてのトランジスタの材料はシリコンではなく、ゲルマニウムだった。
ゲルマニウムからシリコンへ
前回は、シリコン(Si)を代替する半導体材料の候補が、ゲルマニウム(Ge)とインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)であることとその理由を説明した。今回は、ゲルマニウム(Ge)をチャンネル材料とするMOSFETの研究開発状況をご報告しよう。
半導体の研究開発コミュニティではよく知られていることだが、歴史上、初めてのトランジスタの材料はシリコンではなく、ゲルマニウムだった。1947年12月に米国ベル研究所で初めて増幅作用を確認したトランジスタはGeトランジスタで、しかも構造はpn接合によるものではなく、金電極を使った点接触型のトランジスタだった。翌年の1948年にベル研究所はpn接合を使ったトランジスタ構造を考案する。これがバイポーラ・トランジスタの原型であるpn接合型トランジスタで、実際に試作されたのは1951年になる。
したがって初めて商用化されたトランジスタは、ゲルマニウムを材料とする点接触型のトランジスタだった。当時はまだシリコンの結晶性が良好でなく、トランジスタには利用できない状態。天然資源としては貴重だが材料としての純度が高いゲルマニウムが、1950年代のトランジスタ材料の主役だった。
Siトランジスタがベル研究所によって初めて試作されたのは、1954年1月のことである。続く1954年5月にはTexas Instruments社がSiトランジスタを商用化し、量産を開始した。Geトランジスタは高温に弱く、動作温度範囲の上限が約70℃に制限されるという弱点があった。Siトランジスタは高温での安定性が高く、約125℃まで動作した。1950年代後半にはSiトランジスタはGeトランジスタを置き換え、1960年にはトランジスタ材料の主流はSiに置き換わった。
それでは最初の集積回路(IC)は、GeとSiのどちらで試作されたのだろうか。
Texas Instruments社のジャック・キルビー氏が1958年9月12日に動作実験に成功した世界で初めての集積回路(IC)は、Geのメサ型pnpトランジスタを使用していた。そしてフェアチャイルド社のロバート・ノイス氏が1959年7月に特許を申請した世界で初めてのモノリシック集積回路(モノリシックIC)は、シリコン(Si)と二酸化シリコン(SiO2)、拡散層、アルミニウム配線を要素技術とするデバイスである。フェアチャイルド社で最初のシリコン・モノリシックICが動作したのは1960年5月のことである。最初の集積回路はゲルマニウム、実質的な集積回路の始まりはシリコン、と言えよう。
なお以上の歴史に関する記述は、米国カリフォルニア州マウンテンビューに所在する「コンピュータ歴史博物館」のwebサイトを参照したものであることをお断りしておく。
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