NASA、金星探査ローバー用ICの開発に着手:金星の地表温度500℃に耐えるデバイス目指して(3/3 ページ)
金星探査を計画する米航空宇宙局(NASA)は、金星の地表温度500℃に耐えられる半導体の準備に着手した。半導体にとってもかなり過酷な500℃環境でも壊れない半導体を実現する基盤技術開発を任されたのは、米国のベンチャー企業だ。
小さくしたい“クーラーボックス”
Ozark ICは、極めて高い/低い温度に対応するICチップに関連する特許を80件保有している。同社は、アーカンソー大学においてMantooth氏の研究チームと協業することにより、高温環境から守るクーラーボックスから取り出しても動作可能な半導体チップのコンセプトを実証すべく取り組みを進めている。クーラーボックスについては、冷却状態を維持するために必要なエネルギーを抑えられるよう、可能な限り小型化する必要があるため、NASAはクーラーボックス外で動作する高耐熱半導体チップの性能を最大化したい考えだ。
製造者は今後決定
Mantooth氏は、EE Timesの取材に対し、「(高耐熱のPDKが適用される範囲として)高温データ変換装置やメモリ、ロジック、センサー信号処理回路など、いくつかの可能性が挙げられる。ここに、アナログ/デジタル回路も含まれる。今回のプロジェクトは、現位置測定機器/システムに向けた高温動作マイコンに焦点を当てている。まず、8〜32ビット幅のマイコンについて、500℃の温度下での動作を実証したいと考えている。もちろん、この取り組みの一環として、メモリ設計も行う」と述べる。
NASAは、研究チームが概念実証の段階にある半導体チップを製造し、PDKの定義や、製造コストの見積もりなどを実現した時点で、金星探査機に実際に搭載する半導体チップを、どのメーカーが製造するかを決定するという。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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