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IoTで変わる福祉機器、階段を上る車いすも登場「NIWeek 2015」リポート(1/2 ページ)

「NIWeek 2015」の3日目の基調講演では、医療や福祉の分野に貢献する技術として、階段を上れる電動車いすや、高齢者の歩行を助ける下肢用パワードスーツなどが登場した。単に医療機器・福祉機器を開発するのではなく、それらの機器から集めたデータを生かす仕組みが考えられており、IoT(モノのインターネット)と医療・福祉の世界を結び付けるような開発事例が紹介された。

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歩行を助ける下肢用パワードスーツ

 National Instruments(ナショナルインスツルメンツ/以下、NI)の開発者向けイベント「NIWeek 2015」(2015年8月3〜6日、米国テキサス州オースチン)、3日目の基調講演では、開発中の福祉機器や医療機器がいくつか紹介された。

 なかでも注目を集めていたのが、高齢者や、足が不自由な人の歩行をサポートするためにHyundai Motorが開発している下肢用パワードスーツだ。

 このパワードスーツは、搭載されている十数個のセンサーで関節や骨盤の動きをリアルタイムにセンシングしながら制御されている。センサーからのデータ収集と制御を担っているのが、NIの「System on Module(SOM)」だ。SOMは、XilinxのプログラマブルSoC(System on Chip)「Zynq」を搭載した開発ボードである。Hyundai Motorは、SOMを使うことで、開発期間の短縮やパワードスーツの小型化を実現できたとしている。

photophotophoto 左=下肢用パワードスーツを装着したHyndai MotorのSangIn Park氏(左)と、NIでDirector of Academic and Corporate Marketingを担当するDavid Wilson氏。パワードスーツの重さは8〜9kgあるという。長時間装着していると、重さが気になってくるかもしれない / 中央=後ろ側はこのようになっている。バッテリーの駆動時間は約4時間だという / 右=下肢用パワードスーツの各部分に搭載されている部品や機能(クリックで拡大)

 Hyundai Motorは、医療業界と協力して、下肢用パワードスーツのセンサーから集めたデータを使って関節や足全体の動きを分析し、それらを健康な人・若い人のデータと比較して治療やリハビリに生かすことを考えているという。

 下肢用パワードスーツの製品化については、具体的な話は現時点ではないものの、5〜6年後であれば「可能性がある」(同社)としている。同社は、よりパワーが出るもの、小型化、安全性の向上という3つに注力して、次世代品の開発を進めているところだ。

医師じゃなくても動脈硬化の診断が可能に?

 次に登壇したのが、Healthcare Technology Innovation Center(HTIC)の医師、Jayaraj Joseph氏だ。同氏はまず、インドの医療事情について語ってくれた。インドでは、患者対医師の比率が1000:1と、圧倒的に医師が少ない上に、人口の60%が、病院にアクセスしにくい田舎に住んでいるという。さらに、インドでは心臓病で亡くなる患者が年々増加しており、心疾患の兆候を早い段階で予測できるようなシステム作りが急務となっている。

 こうした背景から、HTICは、心疾患のマーカーとなる動脈硬化を、非侵襲(身体を傷つけない)で検査できる装置「ARTSENS」を開発した。具体的には、プローブを首に当てて、超音波を使って頸動脈(けいどうみゃく)の伸縮を検知、そこから血管径を計測する。ARTSENSの開発の目的は、大きく2つある。医師でなくとも検査できるようにすること。そして、大勢の人のデータを集めることだ。

 1つ目の目的は、患者に対して医師が少ないインドでは、非常に重要になる。そのため、プローブを当てる位置が多少ずれていても測定ができるアルゴリズムを搭載している。2つ目は、何万人、何十万人という規模でデータを集めることで「異常値」「正常値」の判断を決めるために必要だという。ARTSENSには標準でWi-Fi通信機能が搭載されているので、データを無線で送信し、特定の箇所に集約することが簡単にできる。

photophotophoto 左=「ARTSENS」の外観イメージ。開発にはNIのSOMが / 中央=ARTSENSの測定原理。トランスデューサから超音波を頸動脈に当て、その反射から血管径を測定する / 右=デモの様子。HTICのJoseph氏が、Wilson氏の首にプローブを当てている。Wilson氏は、どことなくうれしそうである(クリックで拡大)

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