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IoTで変わる福祉機器、階段を上る車いすも登場「NIWeek 2015」リポート(2/2 ページ)

「NIWeek 2015」の3日目の基調講演では、医療や福祉の分野に貢献する技術として、階段を上れる電動車いすや、高齢者の歩行を助ける下肢用パワードスーツなどが登場した。単に医療機器・福祉機器を開発するのではなく、それらの機器から集めたデータを生かす仕組みが考えられており、IoT(モノのインターネット)と医療・福祉の世界を結び付けるような開発事例が紹介された。

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医療・福祉の世界でIoTを生かす

 Hyundai Motorの下肢用パワードスーツと、HTICのARTSENSは、両方とも単なる機器ではなく、大量のデータを収集して、それをリハビリや治療、疾病予防などに生かそうとしている。上記2つの例では、機器自体が“データ収集装置”の役割も同時に果たすことで、医療そのものの進歩にも役立つ可能性がある。IoT技術と組み合わせることで、医療・福祉機器が単に「測るだけ」「使うだけ」のものではなくなることを予感させるデモだった。

電動車いすが階段を上る!

 もう1つ、大きな関心が集まったのが、スイスのETH Zürich(チューリッヒ工科大学)の大学生たちが開発した電動車いす「Scalevo」である。この車いすの最大の特長は、「階段を上る」ことだ。説明するよりも、同大学が公開している動画を見ていただく方が早い。Scalevoが階段を上っていく様子は圧巻である。

階段を上る「Scalevo」。「このような車いすは、他にはない」(ETH Zürich) 出典:ETH Zürich

 Scalevoは、NIが教育用として提供している「NI myRIO*)」を用いて開発された。開発チームは、1年もかからずにScalevoを開発したという。

*)関連記事:ポケットにFPGA搭載の計測器を、学生実験を一新するアプローチ

 Scalevoには、角速度センサー(ジャイロセンサー)やローテーションセンサーなどが搭載されている。これらのセンサーとアルゴリズムによって、Scalevoに乗った時にバランスが自動的に取れるようになっている。ちょうど「セグウェイ」のようなイメージだ。階段を上っている時にはレーザーセンサーで周囲を検知し、階段を上り終えたタイミングで補助車輪が出るようになっている(動画の2分10秒付近)。階段から滑り落ちないようにするためだ。搭載しているバッテリの容量は20AHr。稼働時間は使用状況によって変わるようだが、「動作検証のために、1日中、乗り降りしても問題なく動いていた」(ETH Zürich)という。

photophoto 基調講演で披露されたScalevoの外観(左)と、バッテリを搭載している箇所。Scalevoの前面(乗った時に、ひざの裏が当たる辺り)に搭載されている。なお、Scalevoが地面のへこみにはまってしまうと、自力で抜け出すことは、まだ難しいという(クリックで拡大)

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