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長波長の太陽光を利用できる材料の製造法を開発低コストで高効率の太陽電池の実現へ(1/2 ページ)

物質・材料研究機構(NIMS)の韓礼元ユニット長らの研究グループは、長波長の太陽光を利用できる高品質なペロブスカイト材料を作製する方法を開発した。ペロブスカイト太陽電池の効率を高める技術として注目される。

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波長領域840nmまで

 物質・材料研究機構(NIMS)太陽光発電材料ユニットの韓礼元ユニット長らの研究グループは2015年8月、長波長の太陽光を利用できる高品質なペロブスカイト材料を作製する方法を開発したと発表した。新たな材料を用いた太陽電池は、利用可能な波長領域が840nmまで広がり、高い短絡電流が得られることから、ペロブスカイト太陽電池の効率を高める技術として注目される。

 ペロブスカイト太陽電池は、透明電極やブロッキング層、ペロブスカイト層、キャリア輸送層、裏面電極で構成される。使用する材料が廉価であることや、高温/高真空プロセスを使わず塗布法で量産が可能なことなどから、現行のシリコン系太陽電池に比べて、大幅に製造コストを下げられる可能性がある。


ペロブスカイト太陽電池の構造図 出典:NIMS

 ところが、現行のペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト材料としてMA3PdI3(ヨウ化鉛メチルアンモニウム)を使用している。この材料は、吸収できる太陽光の波長領域が短波長側に偏っており、より高い変換効率を実現するためには、太陽光吸収範囲を長波長側に広げる必要がある。

 このため、長波長領域の光も利用できる新しい材料として、MA(メチルアンモニウム)とFA(ホルムアミジニウム)の2種類のカチオンを混合したペロブスカイト材料((MA) xFA1-xPbI3)の開発が、多くの研究機関で進められている。しかし、これら2種類のカチオンは、混合比率を制御しにくく、結晶温度も制御が難しいという課題があった。

新たな混合カチオン系ペロブスカイト材料

 研究チームは、これらの課題を解決する新たな混合カチオン系ペロブスカイト材料を作製する方法を開発した。まず、PbI2とFAIの混合溶液を基板上に塗布し、130〜140℃で熱処理してFA1-xPbI3の単一結晶膜を形成した。その膜の上にMAI(ヨウ化メチルアンモニウム)の入ったイソプロパノール液を塗布してMAI層を設けた。これら2つの層の材料を過熱により反応させて、品質の高い(MA) xFA1-xPbI3材料を作製することに成功した。

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