Apple、自動車市場参入に向けアクセル全開?:「iMove」や「iCar」は登場するのか(3/3 ページ)
Appleが、自動車市場への参入に向けて着々と準備を進めているとの根強いうわさがある。Appleは、自動車の周辺機器の開発を強化するのか、それとも自動車そのものを作ろうとしているのか。アナリストとともに検証した。
Appleは自動車を作りたいのか?
ここで、「Appleは、完全な自動車を作ろうとしているのだろうか」という本来の疑問に戻る。
この問いに対する答えは実に簡単だ。単純に、「Appleが望むような利益率を実現することは不可能であるため、それはあり得ない」といえる。
しかし、本当にそうだろうか。
IHS Automotive Technologyのシニアアナリストであり、Infotainment & HMI部門担当マネージャを務めるMark C. Boyadjis氏も、「Appleにとって、自動車業界の利益率は低過ぎる」と指摘している。しかし同氏は、「Appleが受託製造という選択肢を取るとしたらどうだろうか」と提言する。
Boyadjis氏は、「Appleは設計プロセス全体を管理したがる企業だが、もし自動車メーカー(OEM)が、そのような企業に大半のプロセスをアウトソーシングすることに前向きであれば、『iCar』を完成させることも不可能ではないと思う」と述べる。
同氏は、「Appleに関してはこれまでにも、電池技術やカーボンファイバー、ヘッドアップディスプレイ(HUD)など、さまざまなうわさが流れてきた。Appleは、自動車の開発・設計に関するあらゆる要素を把握してから、何かを作り出そうとしているのかもしれない。そして、Appleの意向が、製造業者のビジネスモデルや事業規模と合致すれば、受託製造を行うこともあり得る」と続けた。
Juliussen氏によると、内燃エンジンを持つ自動車を製造するには、数十年に及ぶ経験が必要だという。しかし、電気自動車への移行が進めば、機械的な複雑さが軽減されることになるため、技術メーカーにとっては自動車市場への参入障壁が低くなる可能性がある。
さらに重要なのが、Appleが自動車工場を建設する必要があるとは限らないという点だ。
Juliussen氏によると、「自動車メーカーは現在、販売可能な数を超える自動車を製造している。例えば欧州は、自動車が過剰生産状態にあるという厳しい現実に直面している。このため、一部の工場を受託製造に回す自動車メーカーが出てくる可能性もある。また、中国の自動車メーカーも、今後10年間で十分な経験を積み重ねれば、受託製造を担うようになるかもしれない」という。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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