5Gの通信容量を2倍に、富士通研究所らが開発:商業施設などで通信容量低下を防ぐ
富士通研究開発中心有限公司と富士通研究所は、5G(第5世代移動通信)システム向けに、同一セル内で従来の2倍の通信容量を実現することができる無線通信技術を開発した。
富士通研究開発中心有限公司と富士通研究所は2015年9月、5G(第5世代移動通信)システム向けに、同一セル内で従来の2倍の通信容量を実現することができる無線通信技術を開発したことを発表した。2023年ごろの実用化を目指す。
通信の大容量化に対応できる技術の1つとして、無線基地局1個でカバーできる範囲を狭くして、異なる多くのエリアで同一の無線周波数を使用するスモールセル化技術がある。ところが、この技術のみで対応するのは現実的ではないといわれている。これとは別に、通信容量を改善する方法として、同一周波数で無線信号の送信と受信を同時に行う全2重通信方式がある。しかし、この方法も送信信号が受信側に漏れるため、それを低減するための対策が必要になるという。
送受信分離型の全2重通信技術
そこで今回は、送受信分離型の全2重通信技術を開発した。同一セル内にある端末機器への送信と受信を、それぞれスモールセル無線基地局(SBS:Small Cell Base Station)とマクロセル無線基地局(MBS:Macro Cell Base Station)に分担させる基地局送受信分離構成とし、基地局間や端末機器間の干渉を低減した。併せて、全2重通信を実現するための端末機器スケジューリング技術も開発した。
具体的には、同一スモールセル内にある端末機器が、同一周波数を使用して通信する場合に、相互干渉が少ない2つの端末機器を選択する。その上で、無線品質を確保し、同時に同一周波数を使っている他の端末機器に対して、干渉劣化を最小限に止めるよう送電電力値を制御する仕組みである。
併せて、全2重通信を実現するための端末機器スケジューリング技術も開発した。「下り信号を受信する端末機器」、「上り信号を送信する端末機器」、「端末機器の送信電力」について、それらの組み合わせを決めるための演算処理を行う。端末機器の組み合わせや、最適な送信電力を求めるためのアルゴリズムを新たに開発したことで、その処理量は全体で約1/40に低減することができたという。
今回の開発成果を、システムレベルでシミュレーションした結果、これまでの半2重通信と比べて、1個のスモールセルにつき最大で約2倍の通信容量を実現することが可能なことを確認した。この技術をショッピングモールやスタジアムなど、局所的にユーザー数が増大する無線環境で活用することにより、通信容量の低下を抑えることができるとみている。
今回の研究成果は、2015年9月6日から米国ボストンで開催される国際会議「VTC2015-Fall(Vehicular Technology Conference 2015)」で発表する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 部屋を丸ごとデジタル化? 富士通のUI技術を体験
富士通研究所、富士通デザイン、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリは2015年7月、部屋全体をデジタル化するUI技術を検証する実証実験を行うと発表した。複数の人の端末の画面を同じ空間で共有、操作でき、会議やワークショップなどで効率的な情報共有とコミュニケーションの活性化が可能になるという。説明会では同技術を活用したデモが行われたので、その様子を紹介する。 - 自動車や次世代医療分野で新ビジネス創出へ、富士通研が応用研究に注力
富士通研究所は、研究開発戦略説明会を開催した。「ハイパーコネクテッドクラウド」を支えるコア技術の開発を加速するため、新たに「システム技術研究所」や「知識情報処理研究所」、「応用研究センター」を設置した。 - “あえて低解像度”の映像で人の流れを認識、プライバシー保護で
富士通研究所は、監視カメラで撮影した低解像度の映像から、人の流れを認識することができる技術を開発した。この技術を活用することで、個人のプライバシーを侵害せずに、街中や施設内などにおいて、避難誘導や混雑解消などを容易に行うことが可能となる。 - スマホのCPUを冷やす! 厚さ1mm以下の高効率ループヒートパイプを開発
富士通研究所は、スマートフォンなどのモバイル機器に実装可能な冷却デバイスとして、厚さ1mmのループヒートパイプを開発した。