ナノインプリント開発の進展状況をキヤノンが講演(2)〜解像度と位置合わせ、生産性:SEMICON West 2015リポート(9)(3/3 ページ)
今回は、ナノインプリント・リソグラフィを構成する要素技術の開発状況をお伝えする。ここ1年でとりわけ大きく進歩しているのが、重ね合わせ誤差と生産性(スループット)だ。重ね合わせ誤差は半分〜3分の1に低減し、スループットは2倍〜3倍に向上しているという。
スループットを1年で2倍〜3倍に向上
重ね合わせ誤差に続き、生産性(スループット)の向上に関する最近の状況をResnick氏は説明した。なおキヤノンは4台のインプリント装置を基本単位として稼働させることを考えており、以下のスループットは全て、4台のインプリント装置によるもの(1台当たりはその4分の1)であることに留意されたい。
2012年の時点では、スループット(1時間当たりのウエハー処理枚数)はわずか6枚に過ぎなかった。これが2013年には、3倍以上の20枚に向上した。そして2014年には、前年の2倍である40枚にスループットが上昇した。
1台のインプリント装置がウエハーを処理する時間は大きく、オーバーヘッド時間とインプリント時間に分けられる。2012年の時点では1枚のウエハーを処理するために、オーバーヘッド時間が900秒(15分)、インプリント時間が1500秒(25分)、合計で2400秒(40分)と、恐ろしいほどの長い時間がかかっていた。
ここからソフトウエアの改良によってオーバーヘッドを短縮し、レジスト滴下プロセスの改良によってレジスト充てん時間を短くし、インプリント手順の改良によってテンプレートのはく離時間を短縮した。その結果、2013年にはオーバーヘッド時間が168秒(2.8分)、インプリント時間が552秒(9.2分)、合計で720秒(12分)となり、前年に比べると大幅に短くなった。
そしてレジスト送出プロセスの改良によってオーバーヘッド時間をさらに短縮し、部分露光領域(ウエハー周辺部で紫外線照射領域がウエハーからはみ出してしまう露光領域)におけるインプリント機構の改良によってインプリント時間をさらに短縮した。その結果、2014年にはオーバーヘッド時間が72秒、インプリント時間が288秒、合計で360秒(6分)となり、前年の半分の時間で処理が完了するようになった。
(次回に続く)
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