血糖値を測るインク、米大学が開発:ペン1本でグルコースをモニタリング?(1/2 ページ)
米大学が、血糖値(グルコース濃度)を測定できるインクを開発したと発表した。生体適合性のあるインクで、市販のボールペンに充填して使うという。線などを皮膚の上に直接書いて、血糖値をモニタリングすることが可能になるかもしれない。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)の研究グループは、センサー技術において至高の目標とされる、非侵襲(身体を傷つけない)の血糖値検査の実現に向けた取り組みを進めている。今回、同大学のJacobs School of Engineeringの研究チームが、生体適合性を持つインクの開発に成功した。このインクは、血糖をはじめとするさまざまな化学物質に反応することにより、一時的なセンサーとして機能するという。
米国では2型糖尿病の患者数が、1980年〜2011年の間に2倍に増加した。そこで、センサー/バイオテクノロジー分野の研究者たちの関心を最も多く集めているのが、血糖モニタリング関連のプロジェクトだ。米カリフォルニア州北部向けにメディアサービスを展開するKQEDによると、血糖自己測定市場は現在、80億米ドル規模に達するという。
成分はグラファイトと酵素
UCSDが開発したインクには、伝導性を確保するためのグラファイト(黒鉛)と、血糖を測定するための酵素が使われている。そのインクを、市販のボールペンに充填する。伝導性を備える薄いステッカーを皮膚に貼り付け、その上にインクで線を書く。インクが付いたステッカーに、2つの電極を接続し、弱い電圧をかけて電流を測定する。そしてその電流が、携帯型機器と通信可能なBluetooth対応アームバンドに送信されるという。
大学院生であるAmay Bandodkar氏は、「一般の糖尿病患者にとっては、複雑なシステムに見えるかもしれない。しかし、既存の血糖モニタリングシステムは、痛みを伴う上に費用も高額だ。糖尿病患者が1日に4〜5回も自分の指を針で刺さなければならず、さらに毎回1米ドルかかるのであれば、血糖モニタリング費用はあっという間に膨れ上がる」と述べる。
Bandodkar氏は、「再利用可能な血糖試験紙を実現できれば、コストを大幅に削減することが可能になる。現在、このような血糖試験紙の開発に取り組んでいる。インクで(模様を描くなどして)“酵素の層”を描き、血糖値を測った後は、それを拭き取れば、また再利用できる。そのような試験紙だ」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.