血糖値を測るインク、米大学が開発:ペン1本でグルコースをモニタリング?(2/2 ページ)
米大学が、血糖値(グルコース濃度)を測定できるインクを開発したと発表した。生体適合性のあるインクで、市販のボールペンに充填して使うという。線などを皮膚の上に直接書いて、血糖値をモニタリングすることが可能になるかもしれない。
課題は、ライフサイクルの短さ
UCSDの研究チームは現在、インクの価格を下げるための取り組みを進めている。インクの価格が高いのは、酵素の価格が高いためだという。Bandodkar氏は、「酵素がライフサイクルの中で安定している期間は、ほんの2〜3週間しかない。このために、実用化も遅れている」と述べる。
さらに同氏は、「実用化する上で、システムのシンプルさと生体適合性とを可能な限り確保するためには、2〜3週間という期間は短すぎる。少なくとも6カ月間の安定性が必要だ。現在は、室温や高温度下において酵素の安定性を確保するための研究に取り組んでいる。しかし今のところ、まだ問題を解決するには至っていない。酵素はインクの最も重要な構成要素であり、細心の注意を要するためだ」と付け加えた。
Bandodkar氏の研究チームは、UCSDのウェアラブルセンサー開発において中心的な役割を担っている。エネルギー効率の高い無線通信デバイスの開発に取り組む別のグループとの間で、密接に連携を取っているという。このグループは、センサーのデータを携帯電話機やノートPCに伝送することが可能なBluetooth対応無線デバイスの開発に取り組んでいるという。
同氏によると、血糖の他にも、インクを使ってモニタリングできる成分はあるという。例えば、筋肉を使った後にたまる血中乳酸も、適切な酵素を使うことで測定できる可能性があるとしている。現在、血中乳酸も、血糖と同様に指に針を刺して血液を採取して測定しているので、浸襲的な方法となっている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- スマホと人工すい臓をBluetoothで接続、糖尿病の低価格治療に光明
英国の大学が、人工すい臓とスマートフォン/タブレット端末をBluetoothで接続するシステムの開発に取り組んでいる。血糖値モニターやインスリンポンプと併用し、糖尿病の治療を行うためのもので、低価格な治療システムを実現できると期待されている。 - 涙で血糖値を測るスマートコンタクト、Googleが開発へ
グーグル(Google)は、糖尿病患者向けに、涙で血糖値を測定できるスマートコンタクトレンズを開発中だと発表した。 - 皮膚に貼れるバイオセンサー、ストレス検知や食品の鮮度判定も可能
山形大学は、「プリンタブルエレクトロニクス2015」で、有機トランジスタを用いたフィルム型バイオセンサーを展示した。特定の物質(成分)を検知できるようになっていて、皮膚に貼り付けてストレスマーカーとなる成分を検知したり、肉や魚などに貼り付けて鮮度を判定したりといった用途を想定している。 - IoTで作る、“感情的なつながり”を深める家
家電を相互に連携することだけがスマートホームではない――。英国の新興企業は、「エモーショナルホーム(emotional home)」というコンセプトの下、“感情的なつながり”を深めることに重点を置いたIoTプラットフォームの提供に力を入れている。