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人の思考を読み取る? 次世代のスマート義肢脳内“エラー信号”を利用(1/2 ページ)

脳波で動かす義肢の開発は、長年にわたり進められてきた。今回、スイスのローザンヌ工科大学(EPFL)は、脳が何らかの情報を“誤り”だと認識した場合に発せられる電位「ErrP(Error-related Potential)」を使って、義肢など人工装具を操作する方法を開発した。人工装具を思い通りに動かすことが、これまでよりも格段に簡単になる可能性がある。

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 脳波で義肢を動かす技術については、長年にわたり開発が行われてきた。

 しかし、義肢を身に着ける人間が、脳波でそれらを思い通りに動かせるようになるまでには何カ月もかかる*)

*)関連記事:脳波で意思を伝える、まひ患者でも「寝返り」や「飲み物」のリクエストが簡単に

 だが、こうした状況が変わるかもしれない。スイスのローザンヌ連邦工科大学(EPFL)の研究グループは、人間から自然に発せられる脳の信号を読み取って学習する人工装具(義肢など)の開発に取り組んでいる。これにより、わずか数分間で、この人工装具を思い通りに脳波で操れるようになる可能性が出てきた。

 同研究グループは現在、EU(欧州連合)の脳科学プロジェクト「Human Brain Project」も主導している。このプロジェクトでは、“人間の脳を、スーパーコンピュータを用いて完全にシミュレートすること”に取り組んでいる。

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EPFLは、「Human Brain Project」を率いている(EPFLの動画より抜粋)

 Human Brain Projectの共同ディレクターであるHenry Markram氏は、「人間の脳の仕組みを探求し、理解していく上で、全く新しい基盤を提案したい。こうした知識を利用することで、新たなコンピューティング技術の確立を目指していく」と述べる。

脳内の“エラー信号”を利用

 人工装具の開発プロジェクトの主要メンバーであるEPFLの教授José Millán氏は、脳が、何らかの情報を“誤り”だと認識した場合に検出可能な電位「ErrP(Error-related Potential)」が放出されることを発見した。そこで、このような信号を検出することにより、患者から学習することが可能な、全く新しい世代のスマート人工装具の開発に取り組んでいる。

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EPFLが開発に取り組んでいる人工装具の仕組み(クリックで拡大) 出典:EPFL

 上の図から分かるように、従来のように「脳波を解析(解釈)して機器を動かす」ではなく、「機器の動きが正しいか正しくないかを人間(ユーザー)が判断し、誤っている時に出るErrP信号を、機器の制御部にフィードバックする」というアプローチになっている。いわば、“機械に人間の思考を読み取らせている”のである。

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